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樽見鉄道 <その1 初夏編>
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 共著の駄菓子さんに言っていないのだが、『ローカル私鉄なるほど雑学』の取材で、最も足しげく通ったのは樽見鉄道だ。実は毎月のように都合7回も出かけてしまった。そんな暇があったなら、もっと他の鉄道を取材してくれればよかったのに、という駄菓子さんのため息が聞こえそう。
 なぜそんなに通ったのか、その理由を知ったら、もっと深いため息になりそうだが、端的に言えば何度行っても天候に恵まれなかったから。もともと雨男であることに疑いの余地はないが、樽見鉄道ではそれが顕著に現れて、行く度に雨。特に朝の通勤・通学用の客車列車を何としてもお天道様の下で撮りたい。もう取材という範疇ではなく、鉄ちゃんの意地である。
 その樽見鉄道の客車列車に初めて乗ったのは、2003年5月2日、ゴールデンウィークの谷間の平日に出かけたときのことだった。撮影よりも、まずは乗ってみようと思ったからだが、皮肉なことに晴れたのは乗車したこの日だけだったのである。

 大垣駅のホームで、客車列車の到着を待っていると、駅員が出てきて、「次の列車は本巣までしか行きませんが、どちらまでですか?」と尋ねる。
「本巣ですから大丈夫です」と答えると、
「それならよかった。次は7番線に入ります」と丁寧に案内してくれる。
 他の列車は、行き止まりの6番線に到着するが、客車列車だけは機関車を付替えなくてはいけないので、隣の7番線に入線するわけだ。
 ほどなく、派手に彩られたDE10型に引かれて3両編成の14系客車がやってきた。空はもうすっかり明るいのに、ヘッドライトを煌々とつけている。その後乗ったディーゼルカーもすべてヘッドライトを点灯していたので、おそらく安全対策のためなのだろう。

14系客車
大垣で14系客車に乗り込む学生たち。
北方真桑で空っぽになった14系。

←写真は2枚あります。画面に触れてみてください。


 大垣から折り返しの乗客は、ほとんどが男子高校生。
 1番前のスハフ14に乗り込み、早速車内をチェック。やはり寄る年波だろうか、シートはかなりへたっている。カバーもなく、マジックテープがむき出しなのが少々わびしい。されど元特急型客車、シートの転換、リクライニングもできて、通勤・通学には申し分ない。一時期存在したグリーン車の格下げ車両を思い起こさせる風情である。
 走行中、加減速時のズズンという衝撃は、14系など新型客車特有のもの。夜行列車に乗って、この揺れで目を覚ましたものだ。
 北方真桑に着くと、学生たちが三々五々立ち上がり、下車していく。交換列車待ちで停車時間はたっぷりあるから、みなのんびりしたものだ。
 北方真桑を発車すると、車掌から「本巣で降りられるときは、一番後ろの車両からお願いします」と告げられたので、学生たちも下車して空いたことだし、1両ずつ様子を確認しながら後ろの車両へ移動する。と、何のことはない、乗客は自分ひとりになっていた。
 本巣に着くと、職員が14系客車にじょうろでなにやら補給している。尋ねてみると、発電機用の冷却水とのこと。それが済むと、14系は引き上げられてしまった。

冷却水の補給
本巣駅で冷却水を補給する職員。



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