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由利高原鉄道
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 チャンスは今年(2012年)しかない、そう思ってやってきた由利高原鉄道。
 というのも、今年は春の訪れが遅く、ゴールデンウィークでも桜に間に合いそうだったのである。年度始めの4月にまとまった休みを取るのは難しい。だから、今年を逃してはなるまいと行動に移したのであった。

 東京の家に立ち寄った晩に、もう唯一のブルートレインと言える『あけぼの』で羽後本荘へ。
 定刻の6:01に到着した『あけぼの』から降り立ったのは、ほんの数人。そのうちの同年輩の一人は、どう見ても、鉄ちゃんの出で立ちであった。
 しばらく待合室で待機して、6:56発の始発列車1Dに乗り込む。もちろん件の鉄ちゃんも一緒だ。最初の目的地は鮎川。その手前にある旧鮎川小学校の桜と鯉のぼりが狙い目だと、事前に調べておいたのである。
 車中から、小学校の桜が満開なのを確認して、予定どおり鮎川で下車。件の鉄ちゃんも下車したが、夜行明けで、テンションが上がっていなかったせいもあって、声はかけず。おそらく旧鮎川小学校で出会うはずだから、そのときにしよう。
 旧鮎川小学校に着いてみると、そのままの名称の鮎川小学校踏切がもっとも撮りやすそうだ。桜は踏切から羽後本荘側に並んでいるので、必然的に下り列車狙いとなる。

鮎川を渡る
 次は上り4D列車なので、小手調べに後追いで撮ろうと踏切に立つと、羽後本荘よりの線路沿いの斜面に、先客の鉄ちゃんが2人。そこへはどうやっても線路を歩かないと行けないはずだが、それよりも、こちらが踏切で構えてしまうと、向こうからはもろに入ってしまうに間違いない。
 いらんトラブルは避けよう。場所を移動し、全く桜とは関係のない鮎川を渡るシーンを撮影。

 撮影を終えた2人の鉄ちゃんは、どこかへ立ち去り、ひとり気兼ねなくアングルを選べるようになったのだが、意外に難しい。結局踏切に戻って、下り3Dを撮影。これ以上ないくらいオーソドックスなアングルだ。


旧鮎川小学校の桜shadowshadow


 さて、次の上り6Dはどうするか。あれこれ歩き回って、かなりアングルに無理はあるものの、小学校から線路をはさんだ反対側のゲートボール場のあたりから撮ることにする。
 ここで件の鉄ちゃんが登場し、やっと言葉を交わした。私と同じく、桜が間に合いそうと聞いて、「あけぼの」に飛び乗ってきたという。予定は今日1日だけで、とんぼ返りだそうだ。そんな彼も私の横に立ち、一言、「むずかしいですね」と苦笑い。
 そうなのだ。この日は曇天で、曇り空をバックに桜を入れても全く映えない。そういう写真は撮りたくないという彼の言い分も、よくわかる。そんな彼は別の場所へ移り、私はそのまま残ったが、覚悟していたとおり、コントラストがなく、さえない写真になってしまった。


旧鮎川小学校の桜shadowshadow


 次の下り5Dまで1時間近くある。ぶらぶらアングルを探したり、鮎川小学校を探索しながら、時間をつぶす。件の鉄ちゃんは、車に戻って撮影の準備をしている。え?車!?
 やがて三脚を携えてやってきた彼に尋ねる。
「いつのまに車を?」
「いやあ、予約していた羽後本荘のレンタカー屋が8時からしか開かないんで、それまで列車で羽後本荘と鮎川を往復していたんですよ」と言う。
 なるほど、だから鮎川で一緒に下車したはずなのに、しばらく姿が見えなかったわけだ。
 そろそろ5Dがやってくる時刻となった。結局、また何の工夫もないが、桜並木の土手の上で、曇り空で映えない桜を入れて撮ることにする。彼のほうはと言えば、予想外の場所で三脚を立てている。
「そんなところから撮れるんですか?」
「桜の間からピンポイントですけどね」
 やはり、曇天の入らないアングルを考えているようだ。


旧鮎川小学校の桜shadowshadow



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