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タイトル イタリア編2/2


 翌日、予定どおりローマ17時45分発のベスビオ号でフィレンツェへ。満席状態で、指定を取っておいてよかった。フィレンツェには20時30分着なので、食堂車で食事をとることにする。と言いながら、食堂車というのは半分以上、鉄ちゃんの趣味からではあるが。
 ローマを発車してほどなく、廊下をおっちゃんが「リストランテ、リストランテ」と叫びながら食堂車の予約券を配りに来たので、早速もらって指定の時間に食堂車へ。頼んだコース料理は、いきなりガチガチに芯の残ったお米のスープが出てきたので驚いたが、3万リラ(邦貨で当時約4千円)にしては、なかなか良かった。それにしても他のテーブルのお客さんはみな小食だったのか、せっかくウエイターが料理を各テーブルに運んでいっても余ってしまい、一番端に座っていた私の皿に有無も言わさずごそっと山盛りにして帰っていくのには閉口した。

指定券 予約券
TEEヴェスピオ号の予約券と食堂車の予約券

 フィレンツェではドームやウフィツィ美術館、ヴェッキオ宮殿など有名どころをまわる。ローマではすぐに子供達に取り囲まれるので緊張を強いられたが、さすが花の都フィレンツェにはおらず、美しい街並みの散策は楽しいものであった。
 その後、あの斜塔で有名なピサへ。
 フィレンツェ駅でピサ方面行きの快速を待っていると、何やら放送が流れている。もちろんイタリア語なので意味はわからないが、天井の高い駅構内の放送は独特の響きで、日本でも聞き取りにくい。いずこも同じだなあなんて思っていると、快速が出るはずのホームから乗客がぞろぞろと移動しだした。どうやら出発ホームが変更になったらしい。慌てて皆の後を追って、快速に乗る。思ったより混んでいて、どうにか二人分の席を確保した。

ピサ
好ましい雰囲気のピサ駅。
駅前のオレンジ色のバスで斜塔へ向かう。
ピサの洗礼堂、ドーム、そして斜塔。

←写真は2枚あります。画面に触れてください。


 ピサ駅から斜塔まではバス。当時は斜塔の頂上まで上ることができたが、今は危険で上れないそうだ。
 ピサからの帰りはこれも狙っていた鈍行列車に乗る。予想どおり鈍行列車は古い客車で、風情のあるコンパートメントから暮れゆく景色を飽きもせず眺めていた。

鈍行列車
確かピサ駅で撮ったもの。
鈍行列車に味があるのはいずこも同じ。

←写真は2枚あります。画面に触れてください。
(どちらも暗い写真で申し訳ない)



 これでイタリア駆け足の旅は終わり、フィレンツェから夜行列車REMUS号(意味がわからないので原語のまま)でウィーンへ向かう。
 もちろん夜行に乗る行程は私が考えたもので、日本を発つ前に、通信費と称して5割増くらいの料金を支払って1等の個室寝台を予約していた。
【注】REMUSについて
二邑亭駄菓子のよろず話の駄菓子さんから、REMUS(レムス)は、ローマを建国したとされる伝説上の人物ロムルスの双子の弟のことだと、早速ご教授いただいた。
えっ?それくらい常識だって・・・・・?
ということは学のなさを露呈しただけでなく、こんな注を書くこと自体、恥の上塗りだろうか。
 フィレンツェのホームでREMUS号を待つが、例によって定刻である20時17分を過ぎても来ない。ただ、ピサ行きの例があるので気が気ではない。予約した夜行列車が知らないうちに違うホームから出て行ってしまったら取り返しがつかない。 ホームを見渡すと、ぱりっとコートを着たいかにも頼り甲斐のありそうな紳士が目に入った。これはすがるしかないと寝台券を見せて、この列車に乗りたいのだがどうしたのだろうかと尋ねた。寝台券の時刻を見てその紳士は「もう過ぎているじゃないか」と驚いて駅員に聞きに行ってくれた。ほどなく「どうやらここでいいらしい・・・」とちょっと首をかしげて帰ってきた。聞けばスイスの軍人さんで、そこは私のメガネに間違いはなかったのだが、誰かを迎えに来ているだけで、イタリアの鉄道の勝手は今ひとつわからないようだ。
  ルームサービスの朝食
ルームサービスの朝食。
料金は忘れたが、あっさりしているのはしかたないか。
ちなみにテーブル下は洗面台。


 心細い時間が過ぎて、30分遅れくらいでようやく列車が推進運転(バック)で入線してきた。列車名を確認すると間違いなくREMUS号、個室に入ってほっと腰をかける。このときの安堵感は忘れられない。
 車掌が入ってきて検札、「パスポートと寝台券を預けて」と言う。そうか寝台券は取られてしまうんだ、えーと記念に下さいってどう言えばいいんだ、と一瞬の躊躇を見逃さず車掌が胸を張って言った、
「おいらは鉄道のポリースマンさ、安心してパスポートを預けなよ」
 いかにもラテン系らしい調子でそう言われたら、誤解されたと思っても即差し出すしかない。結局寝台券は手元に残せなかった。
 明け方、トイレに行こうと廊下に出ると、車掌室の扉が開け放されてニョキッと足が出ている。ギョッとしてよく見ると、車掌が上半身を車掌室に突っ込んで、グースカ眠っているだけだった。確かに狭い車掌室内では横になれないだろう。でも扉開けっぱなしで、預けたパスポートは大丈夫なの、
ねぇ鉄道のポリースマンさん!・・・・・ZZZZZ



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