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タイトル
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 その後、ホームのベンチに座って、次の信号操作を待つ。上り列車が伊勢奥津を出た9時半ごろ、駅員が出て、上り場内信号のてこを引く。カッシャーン、信号の変わる乾いた音が響く。いい音だ。
 と、信号を引いた駅員がおもむろに線路に下りて、信号のワイヤを引っ張っている。

ワイヤを引っ張る駅員

「どうしたんですか」と尋ねる私に
「去年、ワイヤを交換したので、なじむまで弛まないように引っ張らなくてはいけないんですよ」
「それは大変ですね」
 と、見ているほうは口にするだけで気楽なものだが、腕木式信号機のお守りは想像以上に手間がかかるようだ。自動化されていないということは、裏返せば人手が必要ということ。でも、そうして人が介在するおかげで、ローカル線には温もりを感じるのも事実である。それだけに腕木式信号機の廃止は、やはり残念でならない。

信号てこの操作 下り列車発車
信号てこの操作

下り列車発車の合図


 しばらくして定刻どおり、上り列車がやってくる。このときは次の取材場所へ向かうため、そのまま乗り込み、家城を後にしてしまった。落ち着いたらまた来ようと思いながら、果たせなかったのは冒頭に書いたとおりである。

走り去る上り列車

【2002年5月現地、2004年3月記】

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