はじめに
駄菓子さんとのコラボレーションも3冊目。
今度は大好きなローカル私鉄がテーマである。張り切らないはずがない。
本格的に取材に出かけだしたのは、昨年(2003年)の5月以降の約半年間。ほんの寄り道程度に寄ったものも含めれば、延べ50日間出かけたことになる。
フリーでもない一介のサラリーマンがそんなに出かけられるものか、と揶揄されそうだが、確かに無理をしたところもある。毎週のように土日のどちらかつぶして出かけたり、有給休暇も何日か使った。
それくらい真剣に取材をした、というより、ローカル私鉄にすっかり魅せられてしまったというほうが当たっている。
私の分担は西日本だったにもかかわらず、茨城交通や鹿島鉄道、果ては津軽鉄道にまで出張ったりして、駄菓子さんからは「完全主義」と冷やかされたりしたが、もう止まらない。
なぜ、そんなに魅せられたのか。冷静になって考えてみると、『ローカル私鉄なるほど雑学』の巻頭に駄菓子さんが書いているとおり、驚きの連続だったからだろう。
その驚きは人によって違うだろうが、私の場合は鉄ちゃんを久しく離れていたこともあって、昔の面影が残っていること、逆に全く雰囲気が変わっていること、その両方が驚きだった。
例えば、第三セクターの鉄道を回ってみて、ああ、国鉄時代のままの古い駅舎が残っている! 逆に国鉄時代とは違ってこんなに運転本数が増えて便利になったんだ! という具合である。
でも、それだけこだわってみても、一部の第三セクターは回りきれなかったし、訪ねたローカル私鉄でも、半日や1日ではとてもすべてがわかるものではなかった。
『がんばれ!路面電車』の取材では、なるべく1泊して晩や早朝の様子を見ることを心がけたが、いかんせんローカル私鉄の数は多いこともあって、駆け足の取材となってしまった。
ローカル私鉄だからと、甘く見ていたこともあるだろう。おかげで消化不良気味という感は否めない。
どっこいローカル私鉄は奥が深かった、つくづくそう感じるのである。
せっかく、これだけローカル私鉄を巡ったのだから、そのときの記録を兼ねて紀行文にまとめよう、そう思い立って、この『ローカル私鉄紀行』をスタートさせた。
動機は『がんばれ!路面電車』の現地ルポと同じであるが、路面電車も更新が滞っているのをみても、どれだけ書けるか少々覚束ない。
まあ、ぼちぼち書いていきたいと思うので、気長にお付き合いいただいと思っている。
最後に、今回も路面電車のときと同様、ローカル私鉄の現場の方には本当にお世話になった。ほとんどが飛び込み取材でありながら、貴重なお話をいろいろと聞かせていただいた。それがまたローカル私鉄を訪ねたくなる好循環を生んだのである。心からお礼申し上げたい。
【2004年5月記】