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甘木鉄道2016
コスモスの場所から少し松崎へ進むと筑後川支流の宝満川を渡る。すぐ横を通る大分自動車道が少し気になるが、橋梁には手すりなどもないので足回りもすっきりと撮れる。車両は先ほどコスモスを入れて撮ったAR306で、基山で折り返した111列車である。ヘッドマークに30とあるのは、1986年4月の甘木鉄道開業から30周年を記念してのものだ。
宝満川橋梁は、中央と両端とで構造が異なっている。調べてみると、10年前の2008年の水害で被災し、やはり中央部分だけ架け替えられたそうだ。
秋といえば、柿が実るころでもある。どこかで撮りたいと思っていたら、都合よく宝満川近くの畑の中に見つけた。本当はもっと近寄りたかったのだが、そこもまた私有地内なので道路から撮影する。先の宝満川のころから陽が陰ってしまい、寒々しい色合いになってしまったのは残念。
車両は朝にも撮影したAR307で、車体前後で色が異なると書いたとおり、甘木方が白なのに対し、基山方は青いマスクとなっている。
松崎駅に近い宮園踏切に立ち寄り、基山方を望むと、遠くの山をバックに木々の合間から線路がカーブしてくる。これはいいと、次の113列車はここで撮影することにする。ただ、踏切前後の道路が工事中でちょっと落ち着かない。工事看板には下水道敷設とあって、発注者は当然地元の役所と思ったら、不思議なことに甘木鉄道であった。
「次の列車は12時過ぎに来ますよ」
声をかけてきたのは下水道工事のガードマン。これまた九州らしい穏やかな表情に、ほっとした気分でしばし立ち話。調子に乗ってさっきの疑問を投げかけてみた。
「鉄道敷の下は安全上、鉄道会社しか触れないんですよ」とのこと。なるほどと納得する。
で、肝心の113列車は、撮影に失敗してしまい写真は省略。ちょっと気落ちして松崎駅へ向かうと途中の上岩田踏切が鳴り出した。気落ちしたせいで松崎駅で交換する112列車の存在をすっかり忘れていたのである。慌てて踏切へ駆け寄り後追いで撮影する。できれば列車に陽が当たって欲しかったがしかたない。ちなみに画面下に見える踏切が、先ほどの宮園踏切である。
失敗が続くと、もう一度撮り直したいという気持ちが湧いてくるが、次の松崎発の下り121列車の甘木到着時刻は12時56分。弟との待ち合わせ時刻は13時だから、乗車するしかない。おそらく弟も乗っていることだろう。
到着した121列車は、キリン花園へ向かう観光客で予想以上に混んでいて、その中から弟を探すが見当たらない。そのまま甘木に到着すると、弟がベンチにぽつんと座っていた。
「同じ列車かと思っていたのに早かったね」
「早めに来たんだけど、撮り鉄するって聞いてたから、もしや大板井の川じゃないかと見たら本当にいるんだから・・・」と呆れ顔で苦笑いする。弟が乗っていたのは宝満川で撮った111列車に違いない。
「その列車だったら、ずいぶん早く着いたんじゃないの?」
「昼めし食ってた。でもさ、スーツ姿で撮り鉄ってやっぱり変だよ」
と難癖、いや忠告を受けてしまった。前夜、会社から直行したのだからスーツ姿はしかたない。墓参りだけでなく親戚へも挨拶に行くつもりだったのでラフな恰好とはいかないだろう。しかし、他人はそんな事情を知る由もない。こうして撮り鉄に対する不審の目を強めてしまうのである。上着だけでもジャケットを用意すればよかった。