箱根登山鉄道
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今年(2005年)の紅葉は、いつもより遅いと言われながら、11月に入るとにわかに朝晩の冷え込みが厳しくなり、神戸の北のはずれにある家の周辺の街路樹が一気に色づいてしまった。
そんな様子に鉄ちゃん心が刺激される、「ああ、どこかのローカル私鉄へ出かけて紅葉の中を走る列車を撮りたい・・・」
このところ公私共に忙しいこともあって、鉄ちゃんらしいことはする間もなかった、と言うよりそんな気も起きなかったのが正直なところで、我ながらあまりいい精神状態ではなかったのである。せっかく湧いてきた鉄ちゃんをしたいという前向きな意欲を大事にしなきゃ、という(言い)わけで、例によって金曜日の東京出張帰りに1泊して箱根登山鉄道に寄り道したのであった。
だから、既に2〜3年前となりつつある『ローカル私鉄なるほど雑学』の取材ではなく、正真正銘の最新情報(というほどの情報もないけど)である。
実は直前まで小湊鉄道に行くつもりで、前泊したのは千葉であった。ただ、さすがに紅葉には早過ぎそうなのと、その日の夕方に神戸で用事ができてしまったので、本数の稼げる箱根登山鉄道に急遽変更したのであった。
おかげで新幹線を使ったにもかかわらず、小田原に着いたのは、もう午前10時過ぎ。数年ぶりの小田原であるが、改札を出てみると、あまりの変わりように驚いてしまう。調べてみたら、2003年にアークロードという東西を自由に行き来できるデッキができたそうだ。箱根登山鉄道というか小田急のホームも、開放感のあるドーム状の屋根に改装されて、今風の飛行場のようなイメージになっていた。
小田原駅にて。
おりしも箱根湯本行きの新型ロマンスカー、50000系VSEが入線してきた。
予定では、塔ノ沢で下車し、有名な出山鉄橋まで歩き、そのまま大平台のスイッチバックを見て帰るつもりであった。何せ14時10分の新幹線に乗らなくてはならないので、定番コースに限られるのである。
小田原から10時16分発箱根湯本行きの小田急1000系の急行に乗る。小田原〜箱根湯本間は、箱根登山鉄道の路線と言っても、昼間走るのは小田急の乗入れ車両だけだ。
秋の行楽シーズンの土曜日とあって、車内は混んでいるが、これは予想の範囲内。それよりも、湯本での接続が2分しかなく、キャパシティの小さい箱根登山の電車にうまく乗り換えられるかがちょっと心配であった。
結局、その予感も当たり、超満員となっている電車に、通勤電車と同じように後ろ向きに押し込んで乗ろうと駆け寄った瞬間、扉を閉められてしまった。
ホームには、まだたくさんの乗客が待っている。こりゃ15分後の次の電車も満員になるに違いない。でも考えてみたら塔ノ沢まで一駅だし、え〜い歩いちゃえ、と腹を決めて改札を出る。国道1号線を歩くと、これも予想どおりなのであるが、車の通行量が多く、あまり健康的ではない。それでも第一の目的地である出山鉄橋には思ったより早く、20分ほどで到着した。
鉄橋に並行してかかる道路橋から数本の列車を撮る。もっとも箱根といえども紅葉と称するにはちょっと早すぎたようだ。
上) 出山鉄橋を渡る強羅行き旧型車。(左からモハ110+107+103)
モハ110は2形でクロスシート、後ろ2両は1形でロングシートとなっている。
特にモハ1形は吊りかけ式で、独特の走行音が山々に響き渡る。右) 同じく出山鉄橋を渡る湯本行きモハ1001+2201+2002(右から)
橋の上でカメラを構えると、何やらたくさんの虫が飛んできて、バチバチ顔に当たって落ち着かない。何かと思ったら、黒地に真っ赤な斑点のあるテントウムシであった。斑点の数が2つや4つから10以上ありそうなものまで、個体によってまちまちなのが面白い。
電車の音が背後からするので振り向くと、見上げた逆光の山腹に電車が停まっているのが見える。地図で確認すると出山信号場らしい。ここに撮影に来たのは初めてではないが、信号場が望めることはすっかり忘れていた。それよりも、出山信号場があの高さなら大平台駅はもっと上のはず、そこまで歩くのかと少々げんなりしてしまう。