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平成筑豊鉄道2017
夢の中で何かブーブーと音が鳴っている・・・ああ、スマホの目覚ましか・・・ん?ここはどこだ?・・・そうだ、行橋に来ていたんだ・・・・。
目ぼけ眼で寝床を出る。無理もない、睡眠時間は3時間あまり。
すべては自己責任なのだけど、無茶な行程であった。
当初は連休前の金曜日、定時後に九州へ直行して21時くらいには行橋に着く計画であったのだが、うっかりその晩に会社の送別会の予定を入れてしまったのだ。やむを得ず新幹線を最終「のぞみ」に変更したものの、送別会はどうしても中座せざるを得ない。そのことを予め若い社員に伝えると、
「えっ?送別会のことを忘れて九州へ行くつもりだったんですか?」
「違う!九州へ行くことを忘れて送別会の予定を入れたんだ!!」
いや、そんな抗弁をしても、送別会を中座する不義理を招いた結果は同じである。
寝不足ならもっと寝ていればいいじゃないかと言われそうだが、どうしても夜明けの写真を撮りたくて、行橋6時08分発の始発列車に乗り込む。
車内でうつらうつらしかけるのを耐えて、東犀川三四郎駅で下車して、犀川側へ少し歩いた高屋川の築堤へ。いつものように予め地図を調べ、東側が開けて朝日が望めると踏んだのである。こうして撮影したのが下の写真。本当は左に見えるトラス橋と絡めたかったのだが、角度的にあきらめざるを得ず。おまけに睡眠不足を押して来たのに、北条鉄道や甘木鉄道で撮った写真と代わり映えがしない。もっと工夫しようよ、と我ながら思う。
早朝の撮影後、いったん行橋のホテルへ戻り、朝食をとって少し休憩。10時前に再起動し、今度はレンタカーを借りて、沿線へ繰り出す。
犀川を過ぎたあたりで、山裾に鯉のぼりが泳いでいるのが見えた。これを絡めようと線路の反対側から望遠で狙ってみるが、かなり距離があって小さくしか写らない。そこで、お得意の足し算、手前の菜の花を入れて彩りを添える。
犀川〜崎山間では、線路沿い数百メートルにわたる菜の花の帯ができていて目を見張る。もちろん、次の撮影ポイントはここに決定。列車を待っていると、撮り鉄が一人やってきた。みな狙いは同じだ。聞けば地元北九州の方だそうで、例年はもっと菜の花が多いとのこと。今年は寒の戻りがあったりしたので、菜の花も調子が狂ったのかも知れない。
「次の列車は真っ黒なので映えませんけどね」と北九州の撮り鉄に言われたとおり、やってきたのは「炭都物語号」と銘打たれた400形の410号。石炭で栄えた往時をしのぶという触れ込みで、車体は石炭色、つまり黒なのである。その410号を両側の菜の花が入るよう真正面から撮ってしまったが、あまりに平板な仕上がりだ。もう少し左から狙うべきであった。
崎山駅に近づくと、犀川に掛かる沈下橋がある。実を言うと数年前にも来たことがあるのだが、天候が悪く、思うように撮れなかったことがあり、再チャレンジのつもりであった。でも、この日も朝日こそ拝めたものの、その後は曇りがちで、画面が暗い感じになってしまう。そうとなれば、何とかの一つ覚えの足し算で、河原の菜の花の力を借りる。
ふと見上げると、電線に留まっている鳥が目に入ったが、何だか頭が大きい。餌でもくわえているのかと望遠レンズに交換してのぞいてみると、違う、頭に冠のような羽が生えているから大きく見えたのだ。初めて見る鳥で、名前もわからなかったのだが、翌日、ひょんなことから明らかになる。もったいぶるようだが、鳥の写真と名前はそのときに。
崎山での狙いはもう一つ、駅から源じいの森側へ少し歩いたところにある八幡神社である。線路の両側にある二つの鳥居を入れて撮るつもりが、最初の鳥居のすぐ前に軽自動車が停まっていて、引きが取れない。やむを得ず横から鳥居を一つだけ入れて撮る。北側からの撮影になるので、陽が照っていたら完全な逆光になるはずが、曇ったおかげで落ち着いた感じになった。列車と鳥居の間隔が微妙で、画角を広げたいところだが、そうすると右側に件の軽自動車が入ってしまい興ざめなのである。
この日はここで折り返し、途中で数本撮影した後、16時ごろ沿道のコンビニで一息入れる。と、ついに雨が降り出してきた。買い換えたばかりのiPhoneで天気予報を見ても雨。それもご丁寧に雨が降る背景画面になっていて、テンションはがた落ち。寝不足の疲れもあって、ホテルに引き上げるつもりで車を出しかけて、気が変わる。せっかく来たのだから、新豊津〜東犀川三四郎の犀川のほとりで見かけたヤギたちを見ていこう。
目指す河原に着くと、急に陽が射してきた。いやあ、ホテルに引き上げていたら後悔するところだった。草をはむヤギたちのおかげで、河原でありながら草原にいるような心持ちになる。かつ、反逆光で雨上がりの河原の草がきらきら光って、素晴らしい光景だ。しかし、列車が来る頃になると、すっと陽が陰ってしまったのは、お約束のようなもの。
最後に再び高屋川の橋梁で、思ったほど赤くはならなかったが、夕日を撮る。朝、果たせなかったトラス橋を絡めた構図だ。こうしてこの日は高屋川に始まり、高屋川で締めくくったのであった。