短尺レールを後にして、長駅へと歩き出す。
秋らしいすがすがしい日和の中、ハイキング気分である。
ピーヒョロロ、見上げると、トンビも気持ちよさそうに天高く円を描いて舞っている。
途中、水路のような小さい川を渡る列車を撮る。
先頭左側の鮮やかなワイン色の車両がフラワ2000−1で、車体にはサルビアの花があしらわれている。
後ろの紫色の車両はフラワ2000−2、こちらは宇宙をイメージしたデザインだ。
北条鉄道は、この2両とフラワ1985形の計3両が在籍車両である。
そして到着したのが下の写真の長駅。終点の北条駅とは違って昔ながらの好ましい佇まいを残している。
駅に入って、ひと気のない待合で、閉ざされた出札窓口をながめていると、ここで駅員がお客さんと挨拶を交わし、言葉を交わしていたのはいつのころだったのか、と思いが巡る。
|
昔ながらの長駅
閉ざされて久しい出札口と手小荷物窓口
←写真は2枚あります。画面に触れてみてください。
|
長駅から一旦粟生まで戻り、また少し網引に引き返した築堤で写真を撮ろうと歩き出す。
粟生まで乗ってきた列車は、すぐに折り返してしまうので、歩くというより小走りである。北条鉄道は粟生を出ると、迂回するように一旦北に向かってから大きくUターンする。一方、道路はまっすぐ西へ向かっているので、ショートカットして時間を稼ぐ。
しかし、目的の築堤に着く前に踏切の音が鳴り出し、慌ててカメラを構える。結局後追いでの撮影となってしまった。
「いい写真撮れました?」畑仕事の夫婦から声がかかる。
「いやあ、実は出遅れてしまって失敗しちゃいました」照れ笑いで答える。
もう日は傾き、その夫婦も後片付けの最中であった。こちらも潮時とは思いながらも、結局完全に日が暮れるまで撮影を粘ってしまったのであった。
【2003年11月現地、2004年11月記】