話は変わって、この年、松江しんじ湖温泉駅前には、足湯が設けられ、訪れた日も大勢の人が利用していた。
試しに足湯に入ってみると、歩き回ってへたった足の疲れが雲散霧消して、その後の足取りの軽いこと軽いこと。入る前は夏の暑い時期に足湯なんて、とも思ったのだが、効果てきめんであった。
その松江しんじ湖温泉駅の駅舎は2001年に建替えられ、一見すると美術館かと思わせるほど瀟洒な姿に変身していた。
駅舎と言えば、片やレトロムード満点なのが、出雲大社前駅。
ドーム状の駅舎の中に入ると、ステンドグラスからの光で、シルエットになったツバメたちが鈴なりになってとまっている。巣立ちの日も近いのだろう。
連想ゲームのようだが、駅と言えば、当時、日本一長い駅名を謳っていた『ルイス・C.ティファニー庭園美術館前』だ。
元の『古江』という素朴な響きの駅名から、一躍日本一となったが、2007年に肝心の美術館が閉館してしまい、『松江イングリッシュガーデン前』に改名するという数奇な運命をたどったのである。
最後にもうひとつ。
2日目の夕方、松江しんじ湖温泉駅近くの踏切で、撮影のために列車を待っていると、自転車に乗った女子高生がやってきて、ほんの10メートルくらい先で降り立った。
ん?女子高生鉄ちゃん??と思っていると、しばらくして男子高生がやはり自転車でやってきて、連れ立って自転車を押して坂を上っていく。
なーんだ、待ち合わせしていただけなのか、と思ったものの、二人の後姿を眺めていると、遠い昔の甘酸っぱい思い出が蘇る。
なんて、かっこつけるのはやめて正直に言おう。高校生のころ、同級生カップルの姿を指をくわえて見ていたみじめな思い出、というのが本当のところ・・・。
【2003年8月現地】
『2008年夏』につづく。