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土佐くろしお鉄道

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 松山から16時15分発の特急『宇和海15号』に乗り、宇和島経由で土佐くろしお鉄道中村・宿毛線に向かった。こんな時間になったのは、先に松山で伊予鉄道の取材をしていたからである。

夕日

 宇和島からはバスで宿毛に向かう。ちょうど日の入りを迎え、金色に輝く幻想的な車窓が広がる。
 その金色がいつしか消えて、漆黒に包まれたころ、土佐くろしお鉄道の宿毛駅に到着した。
 宿毛駅は高架上にあって、いかにも今風の駅である。それもそのはず、土佐くろしお鉄道宿毛線(中村〜宿毛間)は、1997(平成9)年に新らしく開業した区間なのだ。ただ、新線区間の例に漏れず、無機質な構内は何となく殺風景で、おまけに乗客も少ない時間帯とあって、余計さみしく感じる。

後川を渡る
 この日は宿毛から中村まで行って投宿。
 翌朝、後川を渡る列車の写真(左)を撮ってから、特急『南風12号』で一気に高知まで向かう。このあと、2002(平成14)年7月に開業したばかりの『ごめん・なはり線』にも行くため、駆け足とならざるを得なかったのだ。取材とは名ばかりで、とりあえず乗るだけというのが本当のところであった。

 『ごめん・なはり線』の始発駅、後免からお目当てのデッキ付の9640−1S形に乗車。新しい路線なのに形式が9640と大きいのは、『くろしお』をもじったから。そして最後のSがデッキ付を示し、2両が在籍する。
 この日は天気もよかったので、ずっとデッキに立ったまま、終点の奈半利を目指す。
 デッキでは、大勢の子供たちが歓声を上げてはしゃいでいる。子供に限らず、大人にもデッキは人気で、まずはみなデッキに乗り込んでくる。おかげで車内には空席もあるのに、デッキだけはラッシュアワー並みの混雑であった。
 それでも、デッキにもたれ、風を感じながら流れる景色をながめるのは、何とも心地よい。さらに一般のトロッコ列車と違って、それなりのスピードで走るので、トンネルなどではちょっとしたスリルも味わえるのである。これがまた子供たちに大受けであった。

9640−1S
 上)後免町駅に進入する9640−1S形。
 右)デッキの様子。
   反射してわかりにくいが、左手が客室で、
   船のデッキと同じような雰囲気。
デッキ
トンネルの中 車内から
 上)車内はデッキの分、幅が狭く、1×2のシートが並ぶ。
    窓の外にはデッキに立つ人の姿が。 
 左)トンネル内の激しい風と轟音に、思わず耳をふさぐ。

 
 奈半利で少し休憩した後、帰りは快速に乗車。
 1本くらいは走行写真を撮っておきたかったので、どこか海に近い駅で途中下車しようと思う。もちろん快速停車駅に限られてしまうが、その中で和食(わじき)駅を選んだ。

ラストショット

 ただ、いざ下車して歩いてみると、やはりこれも新線の定めで、高架部分が多く、海をバックにというアングルは厳しい。どこがいいかと歩き回っているうちに列車が来てしまい、結局中途半端な場所での撮影となってしまった。
 和食駅に戻り、高架のホームに上がると、当然ながらそこからは海が見える。アングルには無理があるが、最後に自分の乗る列車をホームの隅で撮ったのが右の写真。もう日も暮れかかっており、この写真がまさにこの日のラストショットである。

【2003年7月現地、2004年10月記】

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