2009年9月19日から23日まで、忽然と現れた5連休。いつの間にかシルバーウィークという呼び名も付いて、定着するのかと思ったら、次は6年後までないと言う。う〜ん、連休の世界では、ゴールドよりもシルバーのほうが希少らしい。
それはさておき、松本電気鉄道のシルバーウィークは、朝4時45分の始発電車で幕を開ける。上高地への観光客用で、終点の新島々まで途中駅にひとつも停まらない季節列車である。
どんな様子なのだろう、と興味はあったが、さすがに朝早すぎる。始発電車が発車するころは、松本のホテルで完全に夢の中なのであった。
起床時間の目標を失うと、だれてしまう。
なんとなく8時過ぎに起きて、だらだらと朝食をとり、松本駅に入ったときには、もう10時をまわってしまっていた。
跨線橋を渡って、一番端の7番線が松本電気鉄道のホームだ。同じホームの6番線は大糸線で、どちらも山岳路線ということもあって、ホームでは大きなリュックサック姿の人が行き交う。
10時8分発の新島々行きは、もう入線していて、車内はやはりリュックが、どさっと床に並べられ、ほぼ満席だ。
座るのはあきらめて、ドアの横に立ち、新島々を目指す。所要時間はちょうど30分で、立っていてもそれほど苦にはならない。
途中、新村の手前で突然、車窓に満開のひまわり畑が一面に広がり、目を見張る。
ある女性客が「なにこれ!」と叫んでいる。確かに「きれい」と言う前に、そう叫びたくなるくらい広大なひまわり畑であった。
新島々に到着すると、すぐに精算所は長蛇の列となってしまった。松本でJRからの乗換えに改札がなく、フリーで乗れてしまうので、ここで精算となるわけだ。
実は車内で、車掌がカウンターを持って乗客数を数えていたのだが、それを見て、近くの二人連れの男性登山客が「お客の数しか眼中になくて、切符を売るつもりは全くなさそうだね」と揶揄していた。その二人も、長い精算の列の中で、また、ぼやきながら並んでいることだろう。
その点、こちらは松本駅入場の際に切符を買っていたので、長い行列を尻目に改札を出る。
駅前では上高地行きのバスが待ち構え、これまたバスに乗車するために長い列ができていた。
ここまで来て、上高地まで足を伸ばさない手はないとは思うものの、ひとりで行ってもしかたないので、家族一緒に来れる日まで楽しみにとっておこう。
というわけで、10時47分の上り18列車であっさり引き返す。新島々駅の滞在時間は、正味10分足らず。こんなことをするのは、鉄ちゃんだけであろう。
そして、最初の停車駅、渕東(えんどう)で下車。いかにも山麓の田園地帯という感じで、ほっとした雰囲気に包まれる。上高地は華やかで見ごたえもあるのだろうが、自分にはこの駅のほうがふさわしいような気がする。
渕東駅で降りたのは、行きがけにりんご畑が見えたから。まずはすぐ波田寄りの踏切から、下り15列車。陽がかげってしまい、せっかく色づいたりんごが映えなくて残念。
もう少し波田寄りへ歩いたところにも、りんご畑がある。その近くの踏切で、新島々方面を振り向いてみると、山々をバックに、線路が一直線に伸びてきている。これもいいじゃないかと気が変わって、上り20列車はこのアングルで。
次の下り17列車は、再びりんご畑。これも直前に気が変わって、目の前のりんご畑ではなく、遠くに見えるりんごの木を望遠レンズで取り込む。ようやく陽も少しだけ射してくれた。