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松浦鉄道
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 松浦鉄道でもっとも有名な桜の名所は、なんと言っても浦ノ崎駅だ。
 ネットで検索すると、桜のトンネルの駅として数多くの写真がヒットする。おそらく撮り鉄の数も金武の比ではなかろう。そう考えると行く前から気後れしてしまうが、現地に行かなきゃわからんだろ!と自分に発破をかける。夜明け前なら人出も少なかろうと出かけてみると、おっと駅前にはもう7〜8台の車が。駅の周囲ではスマホを手にしたにわか撮り鉄も含め、そこここで待機している。ホームに上がってみると、なるほど見事な桜のトンネルだ。これを駅北側から狙う構図が定番のようで、既に数人の撮り鉄が待ち構えている。そこに加わるのは気が引けるし、ホームに居ては邪魔になるだろう。
 結局、追し出されるように駅を離れて誰もいない黒藻下踏切へ。そこで浦ノ崎駅を発車して桜のトンネルから顔を出した上り列車を撮影する。
 

黒藻下踏切からshadowshadow


 駅へ戻ると駅北側の撮り鉄がいなくなっている。それならばと次の上り列車はホームで待ち受ける。もう少し列車を引きつけたかったが、この直後、ホームの上屋の陰からおばちゃんが飛び出し、後追いでカメラを構えてしまった。目立つ色の服装もあって興ざめなので、このタイミングの写真としたのである。
 

桜のトンネルshadowshadow


 この後もしばらく粘ってみるが、人が増えるばかり。こりゃたまらんと引き上げたのであった。その日の晩、NHKのローカルニュースで浦ノ崎駅が取り上げられていたが、ホームから身を乗り出して撮る人の姿もあって、目も当てられない様相となっていた。

 夜明け前に浦ノ崎へ来る途中、久原(くばら)駅付近でも桜並木を見かけたので寄ってみると、いいじゃないか。かつて貨物扱いもあったようで、側線の残る広々とした構内の両側に桜が続く光景は、浦ノ崎の桜のトンネルとは違う風情で見応えがある。撮り鉄も少ないので、心おきなく撮影できると思ったら、どやどやと重装備の撮り鉄3人が駅へやってきた。否応なしに大声の会話が耳に入るが、日本語ではない。一人だけ片言の日本語が話せるので、尋ねると台湾から来たという。聞けば桜を求めて日本各地を巡っているそうで、なかなかアクティブというかハードな行程だ。
 で、写真は下り列車が到着したところを上りホームから撮ったもの。ご覧のように構内が広いだけに両側の桜を入れるのは意外に難しい。構内踏切の中に立って列車の正面から撮れればいいのだが、もちろんそんなことはできない。
 

久原駅に到着した下り列車shadowshadow


 ところで、このとき台湾撮り鉄3人は、信号機の左奥で構えていた。一方、ホームのヘルメット姿の二人は松浦鉄道の職員で、聞けば運転士から撮影者が線路に近づいて危険との通報を受けて駆けつけたという。実は台湾撮り鉄も、最初は信号機のあたりで構えていて、職員に促されて下がったのであった。というわけで、職員は列車の出迎えではなく、台湾撮り鉄3人を見守って(監視して?)いたのである。もちろん下がったとは言えそこは駅構内で、立ち入るのはちょっとためらう。ただ、台湾撮り鉄の名誉のために付け加えれば、決して彼らも無茶はしていない。むしろ無茶だったのはカメラを提げた地元の方と思しき70代くらいの老人と40代くらいの娘さん?で、踏切でもない箇所を行き来して危なっかしいと感じていた。確かめようはないが、運転士もその二人を見とがめたのではないだろうか。
 けちがついたこともあってか、台湾撮り鉄3人は引き上げてしまい、一人残ってホームで下り列車を待ち受ける。この角度がもっとも多く桜を入れられるが、並行する道路の電柱がなんとも無粋だ。その電線の上を、ひらひらと桜吹雪が舞っている?と思ったら、鳥たちの舞いであった。
 

久原駅に進入する下り列車shadowshadow


 久原駅には、件の親子以外にも地元の方が入れ代わり立ち代わり桜を見に来ていた。どこかの老人ホームから来られたのだろう、介助の女性に付き添われた老婦人もやってきて、見事な桜に「来て良かった」と感激して立ち尽くしている。介助の方に伺うと、施設からは浦ノ崎駅のほうが近いのだが、人が多そうなのでここまで足を延ばしたという。「確かに浦ノ崎はごった返してましたよ」と言うと、「みんないい写真が撮れなかったと、ため息ばついて帰りよるとですもんね(注:相変わらず九州弁はいい加減)」と返され、そのとおりだとうなずく。
 別の地元の年輩女性からも「桜がきれいですね」と声をかけられ、人なつっこい人の多い九州を実感する。こうした長閑な雰囲気の久原駅では、やれ撮り鉄が入るだの入らないだの気にして撮影するより、カメラを置いてゆっくり桜を愛でるほうがふさわしそうだ。

 続いては来がけの列車から見かけた蔵宿駅。
 大正生まれの駅舎の中では、「薪の宿から」というカフェレストランが営業中だ。大正生まれの駅舎内の店と言えば、足繁く通う北条鉄道の法華口駅のパン工房「モンファボリ」を思い出す。いずれも古い駅の再生・活性化の好例と言えるだろう。
 蔵宿駅ではホームのベンチでも飲食が提供されて、外国人3人が歓談中であった。くつろいだいいムードなので、上り列車の到着と絡めて撮りたいと思ったものの、直前に帰ってしまい果たせず。
 

蔵宿駅に停車中の上り列車shadowshadow


 その列車が有田から下り列車として折り返してきた。駅舎には、控えめながら「薪の宿から」の看板が掲げられていて、敢えてそれを入れて撮影した。
 

古い駅舎と下り列車shadowshadow


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