総武流山電鉄
総武流山電鉄へ行ったのは、2002年のこと。そんなころから『ローカル私鉄なるほど雑学』の取材を始めていた、というわけではなく、別の機会に出かけたものだ。出張にひっかけたのは、いつもと同じだけど・・・。
もう3年前のことになるが、せっかくなので当時のメモを元に原稿を起こしてみた。
常磐線馬橋駅の跨線橋を渡り、20数年ぶりの総武流山電鉄へ。かわいい小型車はとっくの昔に一掃され、西武の冷房車ばかりだし、わざわざ有給休暇を取ってまで来ることもなかったか。そんなことを考えながら流山電鉄のホームに立つと、木製の柱が並び、なつかしい風情にあふれる。やっぱりいいねえ、そう思いなおすのであった。
既に入線していた3両編成の『明星』号で流山に向かう。
馬橋駅の『流星』号。JR常磐線のホームから撮影。 反対側のホームには『若葉』号が待機していた。
馬橋駅を発車したとたん、3両の電車が互い違いにゆっさゆっさと大きく揺れて、ローカル私鉄ムード満点である。そんな揺れに身を任せていると、心まで浮き立つようで楽しい。
馬橋からしばらく走ると、まだ3月というのに、ほぼ満開の桜並木が続き、帰りにここで写真を撮ることにする。
最初の停車駅は幸谷、JR武蔵野線の乗換駅だ。以前来たときは閑散としていたが、今や馬橋より開けているのではないだろうか。大勢の乗客が乗車してきた。
その後、小金城址で上り電車と交換し、鰭ヶ崎、平和台と進むが、もともと住宅地の中を走る鉄道だけに記憶は薄い。その平和台の駅前にはイトーヨーカドーが、でんと構え、乗客もほとんど下車してしまった。
そして終点流山。駅構内の奥が車庫になっているのは変わっていない。
駅を出てみると、駅舎も昔のままのようだ。平和台の開発が進んだ分、流山駅だけ時間から取り残されたように見えてしまう。
流山の車庫に左から『流星』『流馬』『青空』が揃い踏み。
これに『明星』『若葉』『なの花』を加えた計6編成が在籍する。閑散とした流山駅
流山からの帰りは、2両編成の『なの花』号。元西武の701系であるが、改造されて運転台側にパンタグラフを載せている。それだけで見慣れた西武電車の印象が変わってしまって、なんとなく落ち着かないから不思議だ。
一旦、馬橋まで戻り、お目当ての満開の桜並木まで歩く。ここで上下1本ずつ電車の写真を撮るつもりが、結局3本ずつとなってしまった。
ただ、この日は低気圧が近づき、大荒れになるという天気予報どおり、風が強く、肌寒い。せっかくの桜も強い風にあおられて、花びら、というより花ごと折れて散っていた。
撮影の合間、自販機で缶コーヒーを買って、ベンチで一休み。と言っても、土ぼこりが舞い上がる中では、桜をめでるというムードにならないのが残念なところ。
ふと、足元を見ると、きれいな桜の花が一輪、落ちている。そっと拾ってバックに入れた。
もう昼も大きく回った。近くの喫茶店で昼食をとる。スパゲティセット950円、値段の割に味は今ひとつかな、と思ったが、店員の娘さんの愛想がいいので、気分は悪くない。
「相変わらず女の子には甘いんだから」って?
もう言い訳はしない、そのとおりである。ただ、その娘さんがお気に入りなのは私だけではなさそうだ。居合わせた常連客らしい年配の夫婦が海外旅行の土産だと言って、その娘さんに紙袋を差し出している。しきりに恐縮する娘さんを、嬉しそうに見つめる夫婦の姿はなんとも微笑ましい。
ほのぼのした気分で、店を後に馬橋駅に向かったのであった。
【2002年3月現地、2005年3月記】