■ 再びなぜ東北だけ?
鷹巣の宿に泊まった翌朝、某テレビ局の天気予報に目をむく。日本全国オレンジ色なのに東北だけ真っ青。「なぜだ〜!」むなしい叫び声が部屋に響く。
急ぐ理由はないので、ゆっくり朝食をとり、鷹巣を出発。古い建物の残る街中を散策したいのはやまやまであったが、雨脚が強いので断念し、車で鉄道に沿って南下する。
米内沢〜桂瀬間の沿線で桜を見つけ、立ち寄ってみる。ただ、うまく桜が入らないので、それに替えて近くの根小屋稲荷神社の境内から垂れ下がるように咲いていた芝桜を前ボケで。
小渕〜阿仁合間で、川向うの山々に雲がかかっているのを見て、もしかしたら列車が撮れるのではないかと立ち寄ってみる。
望遠レンズで確かめてみても、どこに線路が走っているのか判然としない。イチかバチか山に向かってカメラを構えていると、木々の合間からヘッドライトがちらちら。う〜ん、これでは列車がどこにいるのかわからない。(一応、中央左下に写ってはいる)
そして、また阿仁合。秋田内陸縦貫鉄道に何度も来ているように、一度ツボにはまるとなかなか抜けられない性分である。そう、昼食は飽きもせず2日連続の「こぐま亭」の馬肉シチュー&黄金ライス。
食後、雨の中、駅前の駐車場に停めた車の中で休憩していると、駅から3人の子供を連れた家族が出てきた。一番上の子はすぐ下の子のベビーカーを押し、一番下の子はお母さんがおぶっている。傘を差しながら大変だなあと思うが、そんなそぶりは見せず、みな楽しそうだ。その姿に心が洗われ、雨男が来てしまって申し訳ないと心の中で詫びる。
もう一度、山にかかった雲を目当てに、小淵〜阿仁合間へ。撮影場所に着いたとたんに陽が射して、空が晴れてきた。先ほどの家族が思い浮かぶ。よかった、仲むつまじい家族に対する天の思し召しに違いない。おかげでこちらも気持ちよく撮影ポイントに立つ。山にかかる雲も消えてしまったが、お天気になったのだから文句は言えない。
しかし、いよいよ列車が来るときになって、すっと陽が陰ってしまい、がっくり。思わず「俺はそんなに悪いことしてるか?」と愚痴が出る。いや、家族をほったらかして一人で撮影を楽しんでいるのだから、してるか・・・。あの家族連れとは大違いだ。
山の雲もなくなり陽も陰ったので、なんとも平板な仕上がりとなってしまい、写真は省略して、次は桂瀬〜阿仁前田間。ここも来がけにバックの山々にかかる雲が荘厳な雰囲気を醸していたのだが、すっかり晴れている。「別に晴れなくてもいいのに」そんな言葉がふと頭をよぎり、慌てて打ち消す。そんなことを言ったら、いよいよ罰が当たるぞ。
そして締めくくりは、大館能代空港に近い大野台〜合川間の田園が広がる区間で、臨時快速「角館武家屋敷とさくら号」だ。
直前まではバックに森吉山が見えていて望遠にしようかと思ったら、お約束どおり直前になって雲に隠れてしまった。そこで逆に少し広角気味にして田園風景らしさを出したつもり。
この列車を撮影したのが16時45分ごろで、飛行機の出発時刻17時45分まで1時間しかない。ちょっと急ごう、撮影を終えるとそそくさと荷物をまとめ、一路空港を目指したのであった。
【2016年4〜5月現地、同年6月記】