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秋田内陸縦貫鉄道2018 春
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 瓢箪から駒、いや、棚からぼた餅、う〜ん、ぴったりの表現が思いつかないけど、間違いなく幸運を手にするはずであった。
 ここ数年、恒例となっていたGWの秋田内陸縦貫鉄道は、昨年(2017年)でいったん区切りをつけて、今年は別の場所へ向かう予定にしていた。それが、たまたまGWの一週間前の月曜日に東京出張が入り、つい色気が出て、土日にちょっと行ってみようという気になったのである。さすがに桜には早すぎるのは承知の上だ。と思ったら、今年の桜前線は猛スピードで北上し続け、例年より一週間は早い。このままいけば、角館はばっちりのタイミングになりそう。ところが、なぜか桜前線は東北地方を目前に急ブレーキがかかり、足踏みしてしまった。結局、いざ角館駅に着いてみると、駅前の桜はまだつぼみ。駒もぼた餅も幻で終わってしまったのであった。
 桜が咲く前に訪れたのは、2013年のGW以来のこと。このときは花を求めて八津の「かたくり群生の郷」へ行ってみたのだが、雨に加えてとても寒く、すぐに引き上げてしまった。でも、今回は一転して好天には恵まれた。そうとなれば、じっくりカタクリに取り組んでみよう。
 早速、角館でレンタカーを借りて、八津へ向かう。途中、何本か列車を撮るが、どれもおざなりの撮影となってしまった。下の写真はそのうちの一枚、羽後太田〜西明寺間の築堤を行く急行「もりよし」である。


羽後太田〜西明寺間の築堤にてshadowshadow


 八津の「かたくり群生の郷」は、20ヘクタールもの広さがあって、エリアごとにカタクリが咲いていく。チケット300円也を購入した際に渡された地図で確認すると、最も北寄りの「鎌足」というエリアが線路に近いようだ。何はともあれ、そこへ向かい、数台分が停められるスペースに車を置く。
 駐車スペースの先の線路沿いの斜面には、なるほど一面にカタクリが咲いていて、上から撮れば絵になりそうだ。でも、既にそこは「かたくり群生の郷」の外なのか、見学用の通路がない。そのかわり、立ち入りを規制する柵もない。とはいえ、カタクリの花を踏みつけて斜面を登る気には到底なれないのであった。
 と、その斜面に三脚がにょきっと立っているのに気づき、思わず眉をひそめる。視線を感じて駐車場の車に目をやれば、車内から年輩男性が「わかっているだろうな」という顔でこちらを牽制している。三脚を置いて場所取りをすることに、そもそもなじめないこともあるが、何より斜面を登って少なからずカタクリを痛めたに違いない。自分が撮影するフレームに入るカタクリじゃないからどうでもいいということか。その身勝手さに嫌悪感を覚えるが、仮に注意しても「何が悪い」と開き直られて、よけい気分が悪くなることだろう。同じ撮り鉄として恥ずかしいと思いながらも、しかたなく場所を変えて撮影することにする。
 駐車スペースから少し戻ったところの斜面にも、満開のカタクリが並んでいる。こちらは柵が設けられ、しっかり管理されているだけあって、カタクリの密度が高い。もちろん通路も整備されていて、その一番上から線路を見下ろす。
 しかし、この場所は撮り鉄にとっては甚だ厳しいのである。樹木に阻まれて、車両1両分も入らないうえに線路脇にはビニールハウスがある。骨組みだけで目立たないのがせめてもの救い。あとはたまにやってくる観光客の車が真下の道路を通らないことを祈るのみ。
 こうして撮影した列車は、ちょっとした事情であえなく失敗。2時間待って、撮り直そうとしたら、カタクリが山の陰に入ってしまい、ここでの撮影は断念。では下の写真は何なのか。実は執念深く、翌日に撮り直したものなのだ。


一面のカタクリとshadowshadow


 それで、陰になったカタクリをあきらめて、どうしたのか。駐車スペースへ移動して、そこから北側に向かって望遠で狙うことにしたのであった。
 列車の時刻が近づいた頃、中年女性5人のグループがやってきて、カタクリの写真を撮りながら、線路沿いをそぞろ歩きはじめた。
 「ここで列車が来たらいい感じになりそうね」
 「でも、素人写真ではねぇ、鉄道写真家じゃなくちゃ」
 鉄道写真家というフレーズに思わず耳をそばだてる。
 「鉄道写真家の中井精也が出ているNHKの「てつたび」っていう番組、おもしろいわよ」
 さすが中井プロ、彼が一般受けしていることを目の当たりにしたのであった。
 「あとどれくらいで来ます?」近づいてきたグループの一人から尋ねられた。
 「5分くらいですよ」
 「それなら、一緒に撮らせもらっていいかしら」
 「どうぞどうぞ」ということで、並んで撮影に臨む。
 と、そこへ年輩の夫婦もやってきて、カタクリの写真を撮りはじめた。旦那さんは地べたに這いつくばって撮っている。しかし、そこは狙っていた構図のど真ん中で、それでは絵にならないどころか、列車の横で人が倒れている不気味な写真になってしまう。
 「すみません、鉄道の写真を撮っているんで、ちょっとだけ脇に寄ってもらっていいですか」
 旦那さんのところへ行って頼むと、むっとした顔でにらみ返されて「おい、帰るぞ」と奥さんに言い残して車に戻ってしまった。お願いしただけのつもりが、文句と取られたのか、すっかり機嫌を損ねてしまったようだ。先ほどの斜面の撮り鉄をとやかく言えない。しょせん撮り鉄は、はた迷惑な存在でしかないか・・・。


にわか撮り鉄の女性たちと撮影shadowshadow


 撮影後、「どんな写真ですか」と女性グループにせがまれて、画像を見せると、「さすがきれいに撮れてますね」と言われものの、お世辞としかとれない。自分で見ても、思ったよりカタクリが目立たず、いまいちの出来なのである。ふと中井プロならどう撮ったろうかと思う。きっと、さきほど怒らせてしまった旦那さんにも、逆に列車と一緒に入るよう上手に声をかけて、ゆる鉄写真を仕上げたことだろう。
 次の列車は、臨時の上り「角館武家屋敷とさくら号」で、今撮影した列車と八津で交換してすぐにやってくる。駐車スペースから少し移動して線路沿いの小径で構えるが、今度は奥さんの方が、車に戻った旦那さんを放ったまま、沿線を行き来しながらカタクリの写真を撮り始めた。さすがにもう「どいて」とは言えない。そこで、奥さんが歩くのに合わせて、列車側に回り込むようにこちらも移動する。そんなことに気を取られて、はっと見上げると、目の前に「さくら号」がいて腰を抜かしそうになる。カタクリ見物のため、列車が徐行していたので、気配に気づかなかったのだ。慌ててしゃがんで撮影するも、フレームに入ったカタクリは数輪だけ。我ながら情けないが、しかたない。



角館武家屋敷とさくら号shadowshadow


 八津を引き上げ、いつもの角館〜羽後太田の築堤で夕暮れモードに入る。例によって夕焼け期待なのだが、またもやそれはかなわず。天頂の三日月を無理やり広角で入れて、せめてものアクセントにしてみた。


日没後の三日月shadowshadow



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