翌朝、これもいつものとおり夜明け前に繰り出すが、雲が出てしまい、朝日は拝めず。朝食後、早速カタクリに出かけたいところだが、順光になるのは午後からなので、どこかで撮影してから向かうことにする。で、どこへ?と、困ったときは、羽後長戸呂〜松葉間の築堤である。こうして、かろうじて咲いていたコブシ(タムシバかも)を入れて、代わり映えのしないアングルで撮影。
お昼頃、満を持して八津へ。前日と同じ駐車スペースへ行くと、その傍で、人の好さそうな年輩の夫婦が折り畳み椅子に座ってくつろいでいる。旦那さんから「おや、いいカメラバッグですなあ」とにこやかに声をかけられ、「いえいえ、ずだ袋のようなもので」と思わず答えてしまった。
ちなみにカメラバッグは
シンクタンクフォトのレトロスペクティブで、ずだ袋なんて言ってはメーカーに怒られそうだが、カメラバッグらしくないシンプルなデザインが気に入って、このところヘビーローテーション入りしているのである。
それにしても、駐車スペースの横ではカタクリはあまり見えないし、車が出入りしてうっとうしいと思うのだが、話をしているうちに、二人が撮り鉄ということがわかった。
ここでの最初の狙いは、下りの「角館武家屋敷とさくら号」。昨日は列車に気づくのが遅れて情けない結果に終わったので、その撮り直しである。ただ、撮り鉄夫婦が先着だから、「どこで撮りますか」と尋ねる。「私らのことはいいから、お好きなところで」と折り畳み椅子に悠然と座ったままだ。
では、お言葉に甘えて、線路脇の小径から、広角でカタクリの斜面をできるだけ取り込んで構えると、ファインダーに映るのは、ああっ三脚・・・。あの夫婦が置いたものに違いない。しかたなくカメラを振るが、その分、出来は中途半端に。それにしても、気のいい夫婦であっても、カタクリを踏みつぶして三脚を立てるのか。そんなことにこだわる自分のほうがおかしいのか、ちょっとわからなくなる。
その後、前ページに載せたとおり、見学通路最上段からの撮り直し。考えてみたら、昨日の撮り直しばかりだ。次の列車までの2時間近い待ちの間に「かたくり群生の郷」へ。入り口で「そのまま車で行けますよ」と言われたとおり進むと、要所要所に駐車場があって、見頃のエリアに車を置く。小高い丘から、咲き誇るカタクリを見渡すのは壮観だ。これほど広い場所を管理するのは大変な手間だろう。300円では申し訳ない気分になる。
下の写真はそこで撮影したうちの一枚。まるで海のように広がるカタクリが、少しうねった地形のおかげで波打っているように見える。その波間から、にょきっと生えた樹木が幻想的で、しばし撮り鉄を忘れてカタクリの撮影に没頭したのであった。
撮り鉄モードに戻って、今度はずっと駅よりの場所に腰を落ち着ける。道路から一段高い斜面で見過ごしてしまいそうだが、通りが立った際、一面にカタクリが咲いていることにたまたま気づいたのである。これは穴場だと期待して斜面を登ってみると、う〜ん、これまた厳しい。ここも樹木と杭に挟まれて、やはり1両分も入らないのであった。
この後も、夕暮れまで撮影を続けるが、これといった手応えはなく、翌朝には東京へ向かわなくてはいけない。
最後に武家屋敷通りの様子を見に行くと、大したもので、2日前はモノトーンだったしだれ桜がほんのり色づいている。春は着実にやってきている、そう実感して角館を後にしたのであった。
【2018年4月現地、同年8月記】