次も定番(って、一体いくつ定番があるのか)の戸沢付近。快晴の下、映える紅葉を、少し離れた国道付近から目いっぱいの広角で。もっとも、このアングルの写真はWEB上でも結構見かける。
上の写真を撮った翌日にも、同じ戸沢付近へ行ってみた。ただ、この日は天気が今ひとつなのが残念なところ。今日は国道から線路際に近づこうと思ったら、その国道で先客の撮り鉄が構えている。話しかけてみると、何とも気のいい方で、ほっとして会話を交わす。
もちろん、先客がいるのだから、線路際には寄れない。ではどうするか。見渡すと、黄色いカラマツが目に入った。そうだ、そもそも戸沢に惹かれたのはカラマツの黄葉がきっかけだった。初心に返って、そのカラマツを望遠で引きつけてみよう。
やってきたのは、バックの配色に合わせたような黄色に緑のAN8801。たまたまであるが、満足いく結果となったのである。これもこの構図に気づかせてくれた先客のおかげと言える。そんな彼に別れ際、「足は?」と尋ねると「歩きです」とのこと。「駅まで送りますよ」「いえいえ大丈夫です」と三脚を担いで歩き出す。そこに撮り鉄の原点を見た思いがして、最近レンタカーばかりの自分を省みる。
ここからは、今回初めて撮った場所の写真を3点。
まずは西明寺〜八津間だ。陽が傾くと山の陰影が深まり、とても印象的な光景となる。それを主題にした写真である。
なんて、偉そうに書いたが、実は、当初からこの場所と決めて撮ったわけではない。前に書いたとおり、羽後中里で待ち構えた臨時列車が空振りに終わり、羽後太田〜西明寺間の築堤へ向かうつもりが、全く時間がなくなり、やむなく途中で撮ったのである。縦位置にしたのも、両側に高圧鉄塔が立っているのを避けただけなのだ。だからよく見ると、左下を高圧線が横切っている。時間があったらここではまず撮らなかったであろう。我ながらうまくごまかせたというのが本音なのであった。
戸沢から車で帰る途中、羽後中里〜左通間で、木々の合間から桧木内川を渡る橋梁が見えた。ちょっと気になって車を停める。秋田内陸縦貫鉄道は何度も桧木内川を渡るが、護岸がコンクリートで固められていたり、逆に谷が深かったり、意外に河原へ下りられる場所が少ない。ただ、どうやらここは数少ない例外のようだ。これまで何度も横を通ったはずなのに気づかなかった。
こうして河原に立ってみたものの、写真のとおり足場が苦しい。もっと左に寄りたいが川に入るわけにもいかず、後ろは斜面なので下がれもしない。かくして中途半端な出来となってしまった。
同じく羽後中里〜左通間の橋梁を平行する国道から。結構有名な撮影地で、正直に言えば、ここで撮るのは初めてではない。ただ、なかなか満足いく成果が得られず、今回もなんだかなあという結果だ。せめて車体に陽が当たるよう午前中に行ったのだが間に合わず、既に橋の反対側へ回り込んでいた。
最後の写真も、羽後中里〜左通間の黒沢という集落付近で撮ったものだ。黒沢は、数軒の農家が点在する長閑で懐かしい雰囲気に包まれる集落だ。この日は農家の方が一人、大根の収穫に勤しんでいた。
黒沢での目的は、見事に色づいた山をバックに撮影することで、立ち位置を決めて列車を待つ。ところが、まだ14時を回ったころなのに、みるみる山の影が線路に迫る。まずい、もうちょっとこらえてくれ〜と叫んだ結果は、ぎりぎりセーフ、いや後ろの車両が陰になってしまったので、半分アウトと言うべきか。
それでも、山全体がオレンジ色に染まるすばらしい紅葉を見られただけで大満足だ。何度来ても見飽きることはない。だから今年(2019年)も秋になれば、いそいそと出かけてしまうに違いない。
【2018年11月現地、2019年1月記】