■ プロローグ/錦帯橋の朝
久しぶりの九州出張の帰り、新岩国で途中下車。
21時すぎのバスで錦帯橋まで向かい、そのまま近くのホテルに泊まる。
翌朝、天空は快晴ながら、山の端だけ薄雲がかかり、その中で初めて渡る錦帯橋は、荘厳で神がかり的ですらあった。
■ 終点錦町まで
錦帯橋を渡り、錦川鉄道の起点である川西駅まで歩く。8時41分発の523D錦町行きに乗る予定なのだが、錦帯橋で思いのほか時間を食ってしまい、少し早歩き。
川西駅はかなり高い築堤の上にあって、ゆるく弧を描く階段が設けられている。その階段を見上げていると、列車の音がして少々焦る。
見ればJRの黄色いキハ40であった。ここはまだ岩徳線であることをすっかり忘れていたのだ。
階段を駆け上がるには時間がないので、下から見上げてカメラを構えると、大勢の高校生が下車してきた。その中にはもちろん女子高生もいて、このアングルではまずいと慌てて退散。
それにしても、もう8時半なのだが、始業時間は大丈夫なのだろうか。
ほどなくやってきた錦川鉄道のNT3002『ひだまり号』とNT3003『こもれび号』の2連に乗車。いずれも2008年製の新車ということもあって、転換クロスシートの車内はなかなか快適である。
ここから例によって終点の錦町まで、沿線の撮影ポイントを確認しながら全線乗り通す。
予め地図で確認していたとはいえ、錦川沿いを走る列車からの車窓のすばらしさは予想以上だ。
一方で、路線そのものは錦川の南〜西岸を走り、太陽の光が山で遮られるので、撮影するなら基本的に午前中に限られてしまう。
ということで、先に結論を言ってしまえば、錦川鉄道は撮影するより乗って楽しむ鉄道のように思える。
さらに付け加えれば、錦町直前まで錦川を渡ることはないので、車窓を楽しむなら下り列車の場合は進行方向右手に決まりだ。
終点錦町。そのまま折り返しの528Dに乗るつもりなので、12分しか時間がない。
とりあえず、構外に出てみると、季節外れということもあってか、駅前は閑散としている。
客待ちのタクシーが私を認め、様子を伺っているが、利用する気配がないとわかると、いずこか走り去ってしまった。
駅構内に戻り、とても愛想のいい女性駅員から記念に入場券を買って、発車間際の列車に飛び乗る。528Dは1両切り離され、NT3003の単行となって錦町を発車したのであった。