広島電鉄でいただいた『ひろしまの路面電車』という本を家に帰って読んでみると、結構知らないことも載っている。前回、取材らしい取材もできなかったこともあるし、もう一度行かなくちゃ、と思いながら、再び広島の地に立ったのは2000年5月。ぐずぐずしているうち、半年のブランクが空いてしまった。
■紙屋町信号塔
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紙屋町の信号塔
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早速、紙屋町へ行き、まず信号塔を見る。前回は何気なく見ていたが、おそらく日本で稼動している信号塔は、ここだけではないかと改めて観察する。本当は信号塔の中も見学したかったが、さすがにそれは無理な話であろう。
■広島電鉄本社
紙屋町から広島電鉄本社へ。今度は十分時間を取って、電車で向かう。
事務所内に入ると、前回同様忙しそうだ。今度は直前に営団地下鉄日比谷線の事故もあって、ポイントの安全点検などの指示が出ているようで、どうも間が悪い。それでも、応対していただいた課長さんは、私の質問ひとつひとつに懇切丁寧に答えていただいた。
電車はなぜ曲がれるのか、という話をしているときだった。
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カントで傾く1150形
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「
カントもつけていますしね」と課長さんが言った。
「え?道路の中なのにカントがついているんですか」
広島電鉄で一番急カーブの宇品線の海岸通などで、電車が傾くのがわかるとのことだった。さらにここのカーブには自動塗油機も備えてあるという。
『ひろしまの路面電車』に横川駅付近で溝型レールが使われていると書かれていることも尋ねてみた。ただ、さすがにその付近のレールは交換されてしまい、今は江波のポイント部分に使われているだけとのことだった。
話の途中、グリーンムーバーについて、
「台車のついていない車両があったら、カーブで外側に弾き飛ばされるのではないか」
なんて、失礼な質問などもしているうち、1時間以上過ぎてしまい、最後に広島電鉄の将来像を伺って、取材を終えた。
「これからどうされるんですか?」課長さんが尋ねる。
「海岸通と江波に行ってみます」
「それは大変ですね。でも、場所が場所だけにくれぐれも電車には気をつけてくださいよ」
カントに塗油機に溝付レール、確かに注意しなくてはいけないだろう。こうして本社を後にした。
■宇品線海岸通
海岸通の交差点は、T字路になっているので、カーブを曲がる電車を正面から見ることができる。
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左側に塗油機のペダルが見える。
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さあ、どうだろうと見つめていると、おお、傾く傾く。間違いなくカントだ。交差点を渡る車が、ヒョコン、ヒョコンと波打つように走って行くのを見ても、カントがついているとわかる。
さて、今度は塗油機だ。これは電停横の線路にあって、ペダルが見える。ここを車輪のフランジが押し込むと油が差されるのだろう。
「うーん、踏んでみたい・・・」
そう思うのが人情?だろう。そんな鉄ちゃん根性に抗しがたく、課長さんとの約束に反するが、実はここだけの話、電車の来ないことを確認して、こっそりペダルを踏んでみた。ペコッ、簡単にペダルは下りて、意外に手応え(足応え?)はなかった。
■江波
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真ん中のV字の渡り線が溝型レール。
ただ、写真ではほとんどわからない。
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終点のポイント部分に使われているという溝型レールは、最初どこにあるのかわからず、別の場所かと探しまわってしまった。よくよく見れば、ポイントの渡り線のほんの数mが溝型レールになっていた。ポイントにはガードレールもついているので、紛らわしい。写真にも撮ったが、今改めて見ても、あれ、どこだったかな、てな具合である。
そんなことをしているうち、また日暮れが近づいてくる。本当は宮島線で宮島口まで行くつもりだったが、まあ宮島線は鉄道線だから、なんて自分で言い訳して、引き上げてしまったのであった。
【2000年5月現地、9月記】