早いもので21世紀になって数ヶ月経ってしまった。熊本市電の取材が1999年12月だったから、もう1年以上前の前世紀のことである。今さら現地ルポと称するのも少々気が引けるが、そこは気にせず書いていこう。
2日間の休暇を取って、広島電鉄、長崎電軌とまわり、熊本に入ったのは金曜日の晩であった。忘年会シーズンの週末とあって、夜更けまで市電はもちろん街中も、いい調子になった人々でにぎやかであった。
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熊本と言えば超低床車9700形
(通町筋付近にて)
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余談だが、私は完璧な下戸なので、残念ながら酔っ払っていい調子ということを経験したことがない。一度でいいから宴席で言いたい放題、やりたい放題やって、翌日「いやあ、昨夜のことは何も覚えてなくて・・・」なんて言ってみたいものである。もっとも素面で酔っ払いに言いたい放題言っても、相手が覚えていないのだから、結果は同じなのだろうが。とは、どうも嫌味っぽくなってしまったが、まあ酒が飲めない者のひがみである。
下戸の一人旅の晩ほどわびしいものはない。この日も夜更けにお腹が空いたなと思って街に出てみたものの、ちょっと一杯ひっかけるというわけにはいかず、結局ミスタードーナッツになってしまった。ミスドの包みを下げて、歩道の一部が木製のデッキになっているしゃれたアーケードを歩いていると、一体自分がどこの街にいるのかわからなくなる。
せっかく熊本まで来たのだから、小料理屋で地元の酒と肴を楽しめたら旅も深まるだろう、と思うと残念なところだ。
このときは、初めての本格的な取材ということもあって、張り切って広島、長崎と本社にアポイントを取って取材したのであるが、熊本は土曜日になってしまうし、事前準備に2社で手一杯だったこともあって、適当に流してしまったのが正直なところだ。さらに、15年ぶりの熊本電鉄にも行ってみたくて、午前中だけで終えてしまったのである。結果的に一連の取材の中で、熊本市電が一番手を抜いた形となってしまった。
えっ?なかなか本題に入らないから、もうお見通しだって?
翌朝、夜も明けきらぬうち、熊本城をバックにした定番の写真を撮ろうと通町筋に出てみると、さすがに早すぎたようで、露出計の針が上がらない。
街角では早朝から清掃作業をしていた。給水車からポンプで高圧の水を吹きつけたり、なかなか大がかりである。寒風の中、大変だなあと様子をながめていると、ある作業員が、収集した空き缶を水のみ場にバラバラとまいて写真を撮っている。何をしているのかな?と思った瞬間、きれいに片付け、また写真を撮っている。どうやら報告用に作業前と作業後の写真を撮っているようだ。
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熊本城をバックにした定番のアングル
(通町筋にて)
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作業員の名誉のために付け加えるが、清掃作業自体は、私の取材と違って手を抜くことなく、念入りにされていた。それは私が保証する。おそらく、管理者が「作業した」という報告だけでなく、目で見えるように写真をつけろ、と言ったに違いない。ただ、物をつくる作業と違って、清掃作業の成果を写真に残すのは難しい。いつからか、悪い言い方だが『やらせ』の写真を撮るようになってしまったのだろう。実は受け取る側も気づきながら、ゴミだらけの写真と、片付いた写真を見て、「うむ、確かに」なんて言っているのかも知れない。
もし、作業員を信用していないなら、管理者自ら現場を見ればいいし、そもそも作業をさぼったら、市民からクレームがあってわかるだろう。まさに報告という手段が目的になっているように思える。
「おい、こんな完工書1枚ではわからんじゃないか、写真くらいつけんかい」
先日、会社で、外注先の報告書を見て、そう叫んでいたのは、かくいう私であった。う〜む、他人のことは言えない。
どうも話がそれっぱなしのまま、ページが終わってしまいそうだ。
本題は、気を取り直して次回ということで
(^^;