岡山と言えば、狭軌(線路の幅が1,067mm)の路面電車では初の超低床車が、2002年3月に導入されることが発表されたり、路線延伸の影響調査のため、道路を1車線閉鎖する実験が行われるなど、話題に事欠かない。また、RACDA(路面電車と都市の未来を考える会)を筆頭に、路面電車に対する市民活動が最も盛んな都市でもある。
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柳川の広々とした交差点にて。
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今年(2001年)2月に行われた1車線閉鎖の実験は新聞でも報道されたが、「賛否と戸惑い」という記事をみても、マスコミが実験にやや懐疑的なスタンスであることがわかる。例えば街の声として、
「高齢者には便利になる」というコメント以外は、
「いつも渋滞する道路がもっとひどくなるのが心配」
「路面電車は歩道側に敷く計画なのに、道路中央の車線を閉鎖しても意味がない」
「渋滞を懸念して車の出が少なくて客足が減った」という商店主など、路面電車の延伸と、その実験に対する疑問や懸念の声を多く載せている。
これらについて、岡山の交通事情を全く知らない私が口を挟むべきではないことは承知のうえで、ちょっとだけ触れてみたい。
確かに自動車中心に考えたら、1車線減らされることは制約であり、デメリットだろう。でも逆に路面電車側の視点からみれば、車以外の利用者の利便性向上というメリットは明らかだ。
渋滞がひどくなる心配、というのもわかるが、そもそも運転できない人はどうしたらいいのだろう。仮にみんなが免許を取って一斉に車で街に出かけたら、渋滞は一層激しくなってしまう。それよりも路面電車で来られるようにするほうが、渋滞も抑えられるだろうし、空洞化した商店街の客足も伸びるかも知れない。
記事を読んで少々残念だったのは、報道では車を運転する側のコメント、すなわちデメリットが強調されていたことで、そもそも何のための路面電車延伸なのか、それを踏まえたうえで問題点をどう解決すべきか示唆して欲しかったと思う。
ところで、路面電車を歩道側に敷設する計画というのも興味深い。道路中央の安全地帯へ渡らなくても歩道からひょいと乗ることができれば、本当に便利だ。そもそも自動車と歩行者の動線が交錯しないのだから、安全でもある。ただ、問題は、配送などで路肩に車を一時停止させられなくなることで、これまた商店などとの調整が難しいだろう。幸い城下町の岡山は道路が碁盤の目のように整備されている。路面電車・歩行者と交錯しないように表通りから1本入った裏筋に搬入動線を設けることなど考えられないだろうか。
長くなってしまった。さすがに勝手を言いすぎている感もあるので、このへんで本題の現地取材の話に入ろう。
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岡山駅前にて。中央に見える
信号で左右に振り分けられる。
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岡山へは2000年5月中旬の月曜日に休暇をとって、前日の日曜日から入った。実は岡山へは何度も行ったことがあるのに、岡山電軌に乗るのは今回が初めてであった。
岡山に到着して、早速岡山電軌の電停へ行ってみると、運賃を従来の140円均一から岡山駅前〜県庁通り・郵便局前(清輝橋線)間は100円に値下げするという張り紙が目に入った。岡山では100円バスも走っていて、対抗策ということもあるのだろうか。ちなみに100円という運賃は、昭和59年までの均一料金だったそうで、15年前にさかのぼったことになる。
2段階の運賃になったため、従来の運賃先払いから後払いとなり、車内に整理券発券機も設置された。もっとも岡山から東山・清輝橋へ向かう場合は、県庁通りあるいは郵便局前を過ぎて下車したら、必然的に140円を支払うことになるので整理券は使わない。逆の岡山行きだけ100円区間に入ったら、発券されるのである。ただ、まだまだ利用者には定着していないようで、100円区間に入ると、運転士が乗車客に大声で「整理券取ってください」と叫ぶのを何度も聞いた。
岡山電軌の本社、工場がある東山線の終点、東山へ行ってみた。ここには資料室もあるのだが、さすがに日曜日は閉まっているとのことなので、翌朝訪れることにする。
東山から岡山行きが発車するシーンを撮ろうと道路端でカメラを構えると、たまたま女性運転士の担当であった。いきなりカメラを向けて失礼だったな、と会釈くらいしようと目を合わせると、先に女性運転士から会釈を受けてしまう。あわてて会釈を返し、走り去る電車をすがすがしい気分で見送ったのであった。