どういう風の吹き回しか、2003年の4月4〜5日、息子と二人で岡山へ1泊2日の旅に出た。
本当のところは、家族で出かけるつもりだったのが、娘には電車目的なら行かないと断られ、カミさんと留守番である。
では、息子には鉄道趣味が理解されたのか、と言うと、単に「暇だから」という理由である。
まあ、そのあたりは深く追求しても始まらない。とにかく岡山へ行ければいいのだ。
ただ、そんな曖昧な動機だから、家を出たのはもう昼ごろ。当初予定の水島臨海鉄道は断念し、岡山駅前のホテルに直行する。一息ついた後、鉄道趣味と観光を兼ねて、岡山電軌で岡山城へ行き、適当に散策してまた駅前に戻る。
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9200形『MOMO』(小橋にて)
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岡山電軌には、昨年(2002年)、2両1編成の超低床車9200形『MOMO』が導入された。前回の『がんばれ!路面電車』取材時は、まだ登場前だったので、乗ることはもちろん見たことすらない。今回の岡山訪問の目的のひとつは、この『MOMO』に乗車することであった。
MOMOは岡山電軌も自慢の車両なのだろう、岡山駅前の電停の時刻表には、MOMOの運行時間が別書きされている。それによると、次の運用まで30分近くあるので、電停横のマクドナルドで時間をつぶし、頃合を見て電停に赴く。
ところが、来る電車は従来型ばかり。定刻をだいぶ過ぎてしまい、しびれを切らして従来型の電車の運転士に尋ねてみる。
「申し訳ありませんが、さきほど車両故障があって、車庫に入ってしまいました」
アイタ〜ッ! 一瞬、岡山城に行く前に先に乗っておけばよかった、と後悔の念が走るが、しかたない、今日のところはホテルに引き上げることにする。
翌朝、今度こそと岡山駅前電停に立つと、今朝は元気にMOMOがやってきた。
思っていた以上に丸みを帯びたデザインでありながら、深い青系の車体はシックで落ち着いた感じだ。そもそも超低床車自身、新しいものであるが、どちらかと言えば、スクエアな車体の広島電鉄のグリーンムーバーなどと比べても違った意味で斬新さを感じる。
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MOMOの車内。
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早速、目の前のMOMOに乗り込むと、大きな窓に木製のシートが印象的だ。赤い運賃箱もいいアクセントになっている。さすがかのドーンデザイン研究所のデザインだ、隙がない。
などと、ど素人が偉そうに批評するのもおこがましいが、おこがましついでに恐れ多くもプロのデザイナーに一言二言、敢えて注文をつけてしまおう。
ひとつは車体の色で、車両単体だけ見れば、洗練されていて完成度は高いが、街中では意外に映えない。もう少し目立つ色使いでもよかったのではないだろうか。
もうひとつは車内の木製のシートで、見栄えはいいのだが、座り心地が今ひとつ。それと、これはデザイナーの問題ではなく、超低床車共通の課題であるが、座席数が少ないのが残念なところ。タイヤハウス横に気持ち出っ張りがあり、何とかお尻をひっかけられるが、もう一工夫できないものか・・・・・
などと、せっかくの新車に野暮なことばかり言っていないで、話を進めよう。
この日はMOMOで小橋まで行き、旭川沿いを散策する。桜は早すぎるかと思っていたが、ほぼ満開の桜並木が続いている。
後楽園の脇を通って城下まで戻る。実は先ほど乗ったMOMOが岡山駅前に戻って、折り返してくる時間を見計いながら歩いていたのだ。果たして城下の横断歩道に差し掛かると、ちょうどMOMOがやってきた。息子に「写真撮るからちょっと待ってて」と言って、カメラを構える。
ファインダーの中のMOMOが大きくなって、今だ、とシャッターを切った瞬間、目の前を車が横切ってしまい失敗。隣で「やっぱり車が入っちゃったか」と息子が笑っている。「気づいてたなら、車が来てるとか、声をかけてくれよ」と文句を言っても始まらない。
さすがにMOMOが東山から戻ってくるのを待つわけにはいかないので、MOMOの走行写真はあきらめ、従来型の電車に乗って駅に戻ったのであった。
【2003年4月現地、同年11月記】