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軌道めぐり
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 軌道めぐりって、別のコーナーだろう?
  そうなんだけど、家族旅行のことなので・・・。
 そうか、やっと家族にも鉄ちゃんを理解してもらえたか。
  そうならいいんだけど、旅行先にたまたま軌道があったまでで・・・。

 今年(2017年)6月ごろ、今は社会人になった娘が、「8月に3日間休みが取れたから北海道か屋久島に行きたい」と言い出した。どちらを選んだが、答えを言うまでもなかろう。カミさんの希望もあって、屋久島の荒川登山口からトロッコ道を歩いて縄文杉まで行くことになったのである。
 屋久島の安房から荒川登山口まで、屋久島電工の軌道を歩いたのが1977年のことだから、ちょうど40年前。そのときは荒川登山口から先へ行くのを諦めただけに、まさか今になって実現するとは。
 しかし、荒川登山口から縄文杉まで、トロッコ道だけでなく本格的な登山道もあり、往復20キロ強、約10時間もかかるコースである。
 「本当に縄文杉まで行く?」
 「せっかく屋久島に行くのだから、縄文杉は見たい」
 実は自分自身が歩けるか自信がなくて尋ねたのであるが、そう返されたら覚悟を決めるしかない。

 3日間の休みだから2泊3日の行程で、初日を移動でつぶすのはもったいないので、新神戸から始発の「みずほ」で鹿児島へ行き、市内観光をして夕方、高速艇で屋久島に入ることにした。そして2日目が縄文杉、3日目は体調次第で行動して、夕方の飛行機で伊丹に帰るという、ややハードな行程に。
 初日、予定どおり鹿児島へ。3人で旅行すると必ず雨なのだが、この日は晴天で、その分、暑さが半端ではない。結局、鹿児島は仙巌園へ行ったくらいで、あとは何となく過ごして屋久島へ向かう。


桜島
高速艇の乗船場からながめた桜島


 翌朝は、夜明け前の5時過ぎに宿を出て、さすが屋久島ならではの満天の星空を見上げながら安房のバス乗り場へ。
 既に数台分のバス待ちの登山客の列ができている。結局乗れたのは、6時の最終バスになってしまったが、これは当初から考えていたことでもあった。バスは4時台からあるのだが、焦って行っても、こちらの足の速さを考えると、おそらくトロッコ道で後ろから来る登山者をやりすごすことになる。それではお互い煩わしかろうと思ったのである。ただ、遅く出発する分、荒川登山口から安房へ戻る18時の終バスまでの持ち時間が短くなる。「縄文杉から遅くとも午後1時までに引き返してください」という掲示がさらにプレッシャーをかける。
 40年ぶりの荒川登山口。そこはかとなく、なつかしさを覚える。あばら屋の車庫には今は屎尿運搬などに使われるというモーターカーと酒井重工業の機関車が押し込められ、久しく動いていない様子であった。
 7時少し前、いよいよトロッコ道を出発だ。予め言っておいたのに、カミさんが「線路を歩くの?」という顔をする。「そう、そっち」と促す。
 少し歩けば、安房へ向かう屋久島電工の軌道との分岐点に出る。40年前、向こうから登ってきたんだと、ちょっとだけ感慨に耽る。
 荒川を渡り、トンネルを抜けると、ずらっと側線に並んでいたはずの車両たちは、台枠のみの無惨な姿となった機関車1両だけが残っていた。月日の流れを痛感させられる。


荒川登山口の車庫   台枠のみ残った機関車
荒川登山口の車庫
機関車はモーターカーの陰に隠れている。
台枠のみとなってしまった機関車


 50分ほどで小杉谷の集落跡に到着。今は空き地が広がるだけだが、もし40年前に来ていれば、建物などが残っていたのだろうか。
 小杉谷から先は軌道に渡り板が敷かれているので、歩きやすくなる。そして「楠川分れ」でトイレ休憩、さらに進んだトロッコ道の終点近くで、デルタ線(三角線)に出会う。おそらくここでモーターカーなどが方向転換するのだろう。
 「ほら、ここで三角に行き来すれば方向転換できるんだよ」と娘に説明しても「ふ〜ん」という気のない返事で張り合いがない。


デルタ線   デルタ線模式図
渡り板の敷かれた本線から、荒川登山口側を振り向く形で撮影。
娘に相手にされなかったので、ここでしつこくデルタ線について、右図のとおり写真を模式化して説明しておこう。
このようにデルタ線を使って方向転換すれば、ターンテーブルなどの設備は必要ない。
また、引上げ線に余裕があれば、長い編成の列車ごと方向転換ができる。


 トロッコ道の終点、「大株歩道入口」で再びトイレ休憩。ここまで荒川登山口から約8キロ、2時間半ほどで、ほぼ予定どおり。縄文杉まではあと約2.5キロと、もう一息のように見えるが、所要時間は約2時間。すわなち、まだ半分程度でしかなく、ここから本格的な登山が始まるのである。
 登山道に入り、苦手な階段で徐々にカミさんと娘に遅れをとる。途中のウイルソン株、大王杉の要所で追いついては引き離されるということを繰り返しながら、ようやく11時半ごろ、縄文杉に到着。
 ただ、これから縄文杉へ行こうという方に水を差すようで申し訳ないのだが、念願の縄文杉を前にしながら、正直なところ、こんなものかという印象である。というのも、縄文杉は少し離れた見学用のやぐらから眺めるしかなく、「これが縄文杉か」ではなく「あれが縄文杉か」と感覚的にも距離が生じてしまうのである。多くの登山客が来るようになり、根を踏み固めて痛めてしまうので、やぐらはやむを得ないのだが、欲を言えば、もう少し肌で縄文杉を感じたかったところだ。


縄文杉
縄文杉


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