はじめに
『ちょっと古い鉄道のお話』をアップした1998年11月23日からちょうど1周年記念ということで、海外の鉄道編を。
というのも11月23日は世の中は勤労感謝の日であるが、実は私にとってページ開設記念日であるとともに結婚記念日(1985年だからもう丸14年になる)でもあり、新婚旅行がヨーロッパだったのだ。
それまで海外旅行の経験もゼロ、語学力もゼロなのに、団体旅行が苦手な鉄ちゃんがヨーロッパとくれば、ユーレールパス(いわばヨーロッパ周遊券)でフリー旅行しかない。周囲の止めとけという声に耳も貸さず、結婚式の段取りなんか適当にうっちゃり、結婚直前はトーマスクックの時刻表(イギリスの会社が出版している時刻表。日本とスタイルが異なるが結構おもしろい)とにらめっこの日々が続いた。
ヨーロッパの鉄道といえば、子供の頃に絵本で読んだ1等のみの豪華列車のTEE。(TRANS-EUROP EXPRESS)
わくわくしながらトーマスクックを開くと、あれれ、数えるほどしかない。よくよく調べてみると、ヨーロッパでも鉄道は斜陽で、TEEのような専用特別列車は風前の灯火で、代わって実用的な1,2等併結のIC(INTER-CITY)が台頭していることを知った。
何はともあれ、旅行の行程から、ディスカウントチケットの手配(当時の為替レートは1ドル240円くらいだったので、ディスカウントチケットも20万以上して、今のほうがはるかに安い)、さすがに新婚旅行で飛びこみの宿はまずかろうと、あまり大きな声ではいえないが、会社のテレックス(ファックスではない)で、パチパチパチとタイプしてホテルの予約をした。原稿は英語に堪能な会社の同僚に頼んで書いてもらったはもちろんである。
イタリアへ
最初の訪問地はイタリア。今となっては懐かしいアンカレッジまわり、かつBAだったのでロンドン経由で丸1日以上かけてローマへ。へとへとになって空港ロビーに入ると、衛兵が銃を掲げていたりする。いやあ、本当に海外だ。どうしよう、帰ろうか
(^^;)
気弱になるのを鞭打たせたのは新妻(当時)がいたからだろう、ここで堂々としなければ男が廃ると「おう、バスはこっちだ」とか威勢のいいことを言って、市内行きのバスに乗る。ローマ・テルミニ駅行きと書いてあるので大丈夫と思いながらも、実のところ内心冷や冷やで、バスの車窓を眺めるふりをしながら、本当にローマ市内に向かっているのか目を皿のようにして見ていた。
無事テルミニに着き、ホテルは歩いて数分の距離なので、ごろごろとスーツケース(もちろんレンタルの定番サムソナイト)を牽くが、石畳のせいでキャスターが踊りまくって歩きにくいこと。石畳の道を颯爽と走る車のCMはかっこいいと思うが、このときばかりはうっとおしくてたまらない。
早速タクシーの運転手が「ホテルどこなの、大変だよ、車に乗りなよ」という感じで声をかけてくる。「すぐそこのメトロポールだからいい」と答えると、「おお、メトロポール、そりゃ遠い」とかいい加減なことを言ってくる。おまけにジプシーと言っていいのだろうか子供達がわらわらと寄ってきてポケットに手を突っ込むは大騒ぎ。ウーン、やっぱりイタリアだ。
新妻(当時、しつこいってか)はあまりこういうパターンは得意ではなく、ちょっと萎縮気味であった。
翌日、有名なコロッセオに行ったとき、偶然団体旅行で来ていた新妻の友人と出会い、その友人が「ワアー奇遇!」と滅茶苦茶ハイな状態になって、10分くらいで嵐のように去って行ったが、そのときの新妻の一言「楽しそうね」
ズキッ。時間を何分と決められて、ベルトコンベヤのように見るよりも、自分のペースで見れるからいいじゃないかと思っていたのだが、ちょっと自信をなくす。
そのコロッセオで、アジア系の団体客とも出会ったが、その中のカップルが記念写真を撮ろうとして男性がカメラを構え、ものすごい形相でこちらに向かってどけーっとばかり手を横に振る。せっかくのローマでの写真にけったいな日本人を入れたくないのだろう、本当は同胞アジア人として、二人一緒に撮りましょうかと声をかけようと思っていたのに、取り付く島もなく、これまたあっという間に去って行った。
先ほどの友人といい、せかせかしているのはアジア人の習性なのだろうか、もう少し余裕があればいいのになあと同じ日本人が偉そうには言えないが、そう感じたのであった。
そろそろヨーロッパの鉄道という題名を思い出して、いよいよ鉄ネタに。
翌日のTEEベスビオ号の指定を取ろうとコロッセオからローマテルミニ駅へ戻り、構内に入ると、「あああっ、セッテベロだ!」と一人叫んで走り出す。セッテベロ号はTEEから引退したことは事前に調べていたが、格下げされてどこを走っているのは分からなかっただけに、偶然見つけて狂喜したのであった。
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セッテベロ
ああセッテベロ
セッテベロ!!
←画面に触れてみてください。
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運転台を2階に設け、名鉄パノラマカーや小田急ロマンスカーの元祖とも言えるセッテベロを、なめまわすように見て、撮って、ひとときの興奮を味わった。
その間、本来なめまわして興奮する対象のはずの■■(失礼、品がなさすぎるので校正時点で伏字に
^^;)は、何をしていたのか、覚えていない。