信号機の切り替えや発車のシーンをビデオで一通り撮り終えると、いつの間にか高校生たちの姿はなく、あたりはもう静寂に包まれている。
駅員に切符を渡し、一旦駅を出て、4本の腕木式信号機をひとつずつ見て回る。
ここではビデオカメラはバッグにしまい、一眼レフカメラで写真に収める。これまで腕木式信号なんて当たり前と思い、あまりまじめに写真を撮っていなかったが、余命少ないと思うと、いくらシャッターを切っても満たされない。写真に残すだけではなく、現物がいつまでも残って欲しいと思ったものであるが・・・。
駅を中心に時計回りにぐるっと一周して駅に戻ると、9時10分すぎ。まだ次の列車まで1時間くらいある。ところが、驚いたことに老婦人二人が駅にやって来た。そうか、21世紀になっても、こんなローカル線ならではの風情が残っているんだ・・・・・
・・・・・いいじゃないか、時間に追われるのではなく、ゆったりと時間の流れに身を任す。待合室に座っていると、学生時代、気ままに旅行したときの感覚が戻ってくる。鉄ちゃんを離れて久しいが、本格的に再開したい、そう思うのだった。
駅員が出札口で「どうぞ」と老婦人二人に声をかけ、切符を売っている。こちらも松坂までの切符を買い、腕木式信号機のことを少し尋ねる。
場内信号機は、安全のため機械的に両方青にはできないようになっていることや、信号機を切替えるタイミングなどを教えてもらう。知らなかったのは、腕木式信号機とATSが連動していることで、ATSが作動していることは、ホームの端にあるランプで表示されるとのことだった。