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紀州鉄道
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 西御坊駅でキハ603の写真を撮っているうち、心変わりが生じてしまった。もう一度キハ603の走っている姿を撮りたくなったのである。
 駅を後にして、撮影場所を求めて路地を歩く。朝方も思ったのであるが、西御坊駅界隈は、古い家屋が軒を並べ、なんとも情緒にあふれる佇まいが残っている。
 いくつか閉じてしまった商店はあるものの、観光目的の保存ではなく、ちゃんと生きていて、町の息遣いを肌で感じられるところが、歩いていて心地よい。

清床 松原通り商店街

『清床』という屋号の理髪店。
ただ、残念ながら店はたたんでしまったようだ。
松原通り商店街

 そしてたどりついたのが、我ながら能がないと思いながらも、朝一番にあの高校生と出会った踏切。多少言い訳すれば、この区間は家並みが建て込んでいるので、踏切以外に撮影ポイントがないのである。
 その踏切から、西御坊駅に停車中のキハ603の前を渡る女の子を望遠で撮影。(ちょっとピントが甘いうえにトリミングもしているが)

西御坊駅前の踏切を渡る女の子


 同じ場所で下り列車をオーソドックス、言い換えれば何の変哲もないアングルで。

西御坊駅へ向かうキハ603


 そのまま市役所前まで歩き、ここからはビデオカメラの出番だ。
 上り26列車の到着シーンをビデオカメラに収めて、そのまま乗車。
 御坊に着いて、下り27列車として発車したキハ603を見送る。そうなると、やはり御坊に到着するシーンもビデオで撮りたくなり、もう1本待つことにする。上り26列車と28列車の間隔は、20分強と、本数の多い紀州鉄道の中でもさらに短いのも好都合だ。
 列車を待つベンチで、ふと人の気配に顔を上げると、ふふふ、やっぱりまた会った。あの高校生がホームに備えられた紀州鉄道の時刻表に見入っている。
 彼に近づいて「引き上げるのかい?」と声をかけると、
「いえ、もう1往復乗ります」とのこと。
 やがてやってきたキハ603に彼は乗り込み、こちらは再び発車シーンを撮るためにホームでビデオカメラを構える。
 キハ603が走り去る際、車内から彼が軽く会釈をしてくれた。初めて彼がみせた能動的な行動に、気持ちよく手を挙げて応える。

 さて、こちらも1往復、キハ603の走る姿をビデオカメラに収めようと駅を出て、御坊駅近くで上下列車を1本ずつ撮影。
 そのときの動画をアップしたかったのだが、編集ソフトとの相性が悪いのか、ホワイトバランスが崩れて不気味な色になってしまうので、しかたなく、キャプチャー画像を1枚。(それでも少しマゼンダが強い?)
 写真は、上り30列車で、ビデオカメラをパンしたので、図らずも流し撮りのようになっている。
 例の高校生が西御坊でそのまま折り返していれば、この列車に乗っているはずだが、どうも姿が見えない。もしかしたら、私と同じく西御坊で下車して撮影しているのかな。

キハ603キャプチャ


「さあ、これですべて終了!」と思わず独り言が出て、まだ15時すぎだが、夕飯までには家に帰る約束なので、車に戻る。
 念願のキハ603に乗って、撮って、充実した1日だった。真っ赤に日焼けした腕も、充足感に満ちた証だ。

 と、ここから少々雲行きが怪しくなる。
 車を駐車場の精算機の横につけ、表示された料金を払おうと財布を・・・あれ?
 一旦、車を戻して家捜しするが見当たらない。落としたか!?それなら御坊駅のホームの可能性が高い。
 何はともあれ御坊駅に戻り、駅員に事情を告げると「届いています」とのこと。拾ってくれた方は名乗らなかったそうで、お礼のしようがないのだが、ありがたい。本当に助かった。
 無事、駐車場から車を出し、御坊ICから阪和自動車道に入ったのであった。

 ところが、和歌山ICを過ぎたあたりで、突然ピ―――――とけたたましい警報音が車内に鳴り響き、何事かとモニターを見ると、「!異常が発生しました」とのメッセージが。こんなことは初めて。
 異常と言ったって、普通に走ってるじゃん、とプリウスに突っ込みたくなるような愛想のないメッセージである。このあたりは「不正な処理のため終了します」と身も蓋もないエラーメッセージを出していたかつてのウィンドウズパソコンと同じである。
 まあプリウスも電装品のお化けなのだから、したないかと紀ノ川SAに緊急停車して、再起動してみる。もはやパソコンそのものである。
 しかし、メッセージは消えない。エラー番号も出ないので、全くのお手上げ状態。やむを得ず次の阪南ICで降りて、トヨタのディーラーに直行。
 ディーラー曰く、おそらくインバーターの冷却ポンプの故障だが、部品がないので、エラーメッセージだけ消して、神戸に帰って改めて点検して欲しいとのこと。
 とにかく帰るしかないと、ディーラーを出て阪神高速へ。しばらく順調に走り、もしかしたら誤信号でメッセージが出ただけかも、と安堵しかけたころ、ピ―――――!トホホ・・・。
 インバーターが焼けたりしたら目も当てられないので、尼崎の手前の中島PAに再び緊急停車。
 ボンネットを開けて、インバーターの様子を見るが、焼けるほどの高熱ではない。そもそも冷却水のリザーブタンクもそれなりに熱くなっていて、ポンプは動いているんじゃないの、という気もしたが、念のためボンネットを開けたまま、しばらく冷やす。
 そんなプリウスの姿を、PAにやってくる車のドライバーが、ちら見していくのがちょっと恥ずかしい。
 こうして、なんとか自宅に帰りついたのが20時すぎ。往きは2時間だったのに、帰りは5時間近くもかかってしまった。
 気分よく紀州鉄道を終えたはずのに、どこで歯車が狂ってしまったのだろう・・・。

後日談)
 改めて点検した結果、やはり冷却ポンプの故障とのことで交換。その後、お盆に神戸〜東京を往復したが、トラブルは起きていない。

【2009年7月現地、同年8月記】

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