富士急行1/2
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車が完全に凍てついている。
前夜、宿に到着して、屋外の駐車場にレンタカーを停めたとき、1月上旬という時期はやばいかも、という悪い予感が当たってしまった。
宿に戻ってお湯を手配するのも億劫なので、防寒を兼ねて持参した軍手をはめて、無理矢理フロントガラスの氷をはぎ取る。
ただ、かえって手間がかかってしまい、朝一番に予定していた列車を撮り逃してしまった。
まだ明けきらない三つ峠〜寿間の大カーブを行く元京王電鉄5000系の1000形4連。
目指したのは三つ峠〜寿間の有名な富士山の撮影ポイント。
でも、せっかく苦労して氷をはがしてきたのに、着いてみると、まだ陽が射しておらず、撮影には早すぎたのである。そうと知っていれば、もっと宿で寝ていたのに。
一番有名なポイントでの撮影は、陽が射すまで後回しにして、ほかに撮影ポイントがないか、探しがてら歩いてみる。
途中で犬の散歩をしている老人と出会い、声をかけられた。
「写真撮ってるの?あのレンタカーだね」
「え、そうです」
邪魔にならないように停めたつもりだが、見慣れぬ車をしっかりチェックしていたようだ。
「この先の踏切を渡った資材置き場のあたりから富士山の前を通る電車が撮れるんで、よかったらどうぞ」
「ありがとうございます」
ということで、早速向かってみる。
確かに堂々とした富士山をバックにできたが、いかんせん、列車が日陰で真っ暗になってしまうのが残念。
パソコンで無理やり補正をかけたが、リバイバル色の1000系の色合いまで少々おかしくなってしまった。
少し戻って、大カーブの外側から撮る。ちょうど車体に富士山を描いた1000形がやってきたので、本物の富士山とのW富士を狙ったのだが、やはり列車が陰になり、やはり厳しい出来だ。
陽が回ってきたので、そろそろ頃合いかと、最初のポイントに戻ってみると、いつの間にか鉄ちゃんが1人いる。声をかけてみると、幸い気さくな人で、列車待ちの間、しばし鉄談義に花が咲く。
このとき撮った写真も、伊豆箱根鉄道駿豆線とともに『鉄道を撮る』に掲載してもらったので、ここではそれ以外の写真を載せておこう。もっとも、撮影場所が同じなので、あまり代わり映えしないが。
何本か撮った後にやってきたのは、『富士登山電車』。同社の主力の1000形に属するものの、内装を観光用に徹底的にリニューアルして、まさに看板列車となっている。
実はその前年の秋にも富士急行を訪ね、大月から乗車した車両が、たまたま『富士登山電車』だったのである。
例によって事前に何も調べていなかったので、車内に入ると、その凝ったしつらえに感嘆する。木をふんだんに使ったつくりは、誰の手によるものかすぐにわかった。そう、あの水戸岡氏がデザインしたものだ。
左上)アテンダントも乗務する。
左下)乗降口横のシート(ソファ?)も凝っている。
上) 富士山側の座席は、お決まりの外向き。