取材編、雪景色編と続けてきたが、名鉄からやってきた車両を見ないまま終わるわけにはいかない。
というわけで、2006年のゴールデンウィーク、正確にはメーデーの日に再び福井に向かった。今度は撮影に徹するつもりで、前夜、神戸から車で福井入り。
翌朝、早速裁判所前に向かう。そう、また例の女子高の通学風景を見にいったのである。懲りないねえ。
しかし、カメラを構えると、女子高生から「なにあれ、気持ち悪い」としごくもっともなお言葉を頂戴し、はい、懲りました。
裁判所前なら素直に裁判所前で撮ろう、ということで場所を変えて撮影したのが下の写真。
そして、肝心の旧名鉄車両は?
もちろん、770形、880形、そして部分低床車の800形、すべて走っていた。
塗装は変わったが、白をベースとした車体を見ていると、ふっと岐阜駅前に立っているような、そんな錯覚に陥る。
この後、たまには郊外を走る姿も撮ろうと、市街地を出る。
ちょうどハーモニーホールに差し掛かったあたりだった。列車の来る時刻でもないのに踏切の音が聞こえ、おかしいなと思う間もなく140形が武生方からとことこ走ってくるではないか。
慌てて車を停めて、カメラを取り出し構えるが、場所が悪く何とも冴えない構図にシャッターにかけた指が萎える。
これは折り返しを狙うしかない、と気持ちを切り替え、三十八社駅近くで陣を張ったのが、昼前のことであった。
まあ1時間くらいで戻ってくるはず、と思って待ち構えるが、来るのは770形、次いで610形、200形・・・。時間だけが13時、14時と無情に流れていく。
まずいな、家には夕方に帰ると言ったのに、と思いながらも離れられない。車を出したとたんに来たらどうしよう、ここまで待ったのにもったいない。金縛り、いや鉄縛りというべきか、身動きがとれないまま意地でねばる。
4時間近くたった15時すぎ、やはり時刻表と違う時刻に踏切の音が聞こえ、どきどき胸が高鳴る。
果たして遠方に140形が姿を現し、ツリカケ音を響かせながら、近づいてきた。そして三十八社駅で時間調整なのかしばし停車した後、走り去る。
ふう、やっと思いを遂げることができた。ほっと落ち着くと、さっきまでの胸の高鳴りにかわって今度は腹が鳴る。あ〜腹減った。
【2006年5月現地、2007年1月記】
追記)福井鉄道に唯一残っていたツリカケ式の140形も2006年10月14・15日に「さよなら運転」を行い、残念ながら正式に引退してしまった。