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小湊鐵道(前編)
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上総大久保駅
 その後はひとつ手前の上総大久保へ。前回の乗り鉄時に山あいの雰囲気が印象に残った駅だ。
 木造の簡易な駅舎があるだけの小さな駅であるが、ベンチに腰掛けると、なぜか落ち着く。
 待合室の壁に、駅前の白鳥小学校の児童たちの絵や俳句が並べられていることも、心を和ませてくれる。

懐石料理列車
 上総大久保での撮影は、まずは月崎寄りの築堤を走る2両編成の下り列車。懐石料理列車のヘッドマークをつけている。
 列車を拡大してみたら、同じに見えるキハ200形でも、乗降扉や窓のサッシなど、いくつか違いがあるようだ。

上総大久保〜養老渓谷間
 折り返しの上り列車は逆に養老渓谷側、白鳥小学校の裏手を抜ける道から撮影。木々の合間に2両編成が入るはずと思ったら、後ろが蹴られてしまった。
 ここで引き返してもいいのだが、せっかくなのでこのまま養老渓谷に向けて山道を歩いてみる。
 本音を言うと、あわよくば、山あいから小湊鐵道が見通せる撮影ポイントが見つかるかも、という期待もあったのだが、結果的にそれは果たせず。
 というわけで、ここからは文字どおり鉄道からは外れた話題となるが、少しばかりお付き合いを。

芋原第一トンネル
 上総大久保駅前の案内板で、「森と梢のみち」と称すると知ったその山道は、1/25000の地図によると途中にいくつもトンネルがあって、不思議な感じがする。(後で調べてみたら、房総半島は砂岩の山が多いので、トンネルはつくりやすかったそうだ)
 それにしても、道幅の狭い山道のトンネルである、中に入ったら真っ暗じゃないの、と少し心配になる。大井川鐵道の旧線跡のトンネルで難儀した記憶が蘇る。
 そしてやってきた最初のトンネルは、芋原第一トンネル。
 車一台がやっと通れる幅しかないのに、やたら背の高いトンネルである。距離も短いので中が真っ暗と言うこともないし、写真ではわかりにくいが、ちゃんとトンネル内に照明も備えられていて、感心する。
 でも、やっぱりトンネルは苦手。ふと誰かが後ろにいるような気がして、ビクッと振り向いてしまう。そう、見かけによらず?小心者なのである。

倒木がもたれたトンネル
 次は素掘りっぽい感じのトンネルで、名称も特につけられていないようだ。
 そのトンネルを過ぎて振り返ると、またぎょっとする。倒木がトンネルの坑口にもたれかかっていたのである。ひとりで歩いてきるときに、こんな倒木に直撃されたら目も当てられない。

房総の雪
 心細い気分のまま歩くと、今度は突然、銀世界が広がり、もう頭の中は半ばパニック。
 冷静に考えれば、数日前に振った雪の吹き溜まりなのだろう。
 おまけにその先のトンネルは、コンクリートでがちがちに固められた山肌に、申し訳程度に穿たれている。
 出口は見えているものの、入るのも気後れしてしまう。

 トンネルを抜けると芋原橋が見えてきて、渡ろうとした瞬間、ガッシャーン! 何かが割れる音が響き渡った。
 「ひぃ!」思わず叫び声をあげて首をすくめる。(会社の部下にはとても見せられない姿)
 一体何事かとあたりをうかがうと、橋を渡った先の山肌に無数のつららをあった。どうやらこの一部が落ちたらしい。
 その山肌に近づいて、つららをつぶさに観察する。長いもので1m以上はありそうだ。おそらく地下水が滲み出て、つららになったのだろうが、山林の保水力をまざまざと見せつけられる思いだ。
 それにしても、先ほどの雪といい、このつららといい、房総半島の温暖というイメージがことごとく覆される。

芋原橋から   無数のつらら
芋原橋の先の山肌には無数のつららが。
道端には砕け散ったつららが散乱している。
恐る恐る下からつららを見上げる。
落ちてくるのが怖くてこれ以上近寄れない。

 「もう山道は十分だな」ということで、養老渓谷まで歩くのはやめて、トトロの出てきそうな熊野神社で道を折れ、小湊鐵道沿線に戻る。
 ちょうど折津の集落に出て、そこで下り列車を撮影。
 アングルに困って、また広角、それも正面で撮ったものもあるのだが、ここでは敢えてこのタイミングで撮った写真を載せよう。

上総大久保〜養老渓谷間にて


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