夕暮れは再び球磨川第四橋梁。実は前日も同じころに寄ったのだが、東側からアプローチしたら川岸へたどり着けなかったのである。そこで、今日は西側から回り込めないか、一か八かカーナビにない道を勘だけで走る。道沿いには「京が峰横穴墓群」との案内看板があって、そこへ向かっているようだ。進むにつれて、行き違いができないどころか、いよいよ脱輪しそうな道幅となり、不安がもたげ始めたころ、意外に広い駐車場に出てほっとする。
せっかくなので、京が峰横穴墓群に立ち寄ってみる。写真ではわかりにくいが、階段を上った先の岩肌の下に小さく2つの穴が空いているのがそれである。穴をのぞき込むが、ここに遺体があったと思ったら急に寒気がして、手だけ合わせて逃げるように下りる。
墓群の先から、都合よく橋梁をくぐる道があったので、東側へ回り込む。そこから先はわずかに人が通った痕跡のある程度で、なんとも心細い。本当にひとりになると臆病になってしまう。
そんな苦労?の甲斐あって、なんとか川岸に出ることができた。東側へ回るというのは、言うまでもなく夕日が目当てなのだが、ちょっと雲に隠れてしまい、それらしくならなかったのが残念。もう少しメリハリがつけばよかったのだが。
撮影後は長居は無用とばかり、急ぎ足で車に戻り、宿へ向かう。前日、ぜいたくしたので、一転して今夜は宿代を半分以下に絞って、ビジネスホテルのような宿に格下げである。
最終日の早朝、懲りもせず4回目の球磨川第四橋梁にチャレンジ。この日は冷え込みがゆるんだので、昨日ほどの霧ではない。
そうして、現地へ行ってみると、バックに高圧鉄塔が。なるほど、霧が少し晴れたと思ったら、落ちはこれか。おまけに写真手前に見える球磨川の分流が渡れそうで渡れず、橋に近づけない。一応撮影はしたものの、またしてもフラストレーションが溜まる結果となってしまった。
その後は、これもまた前日と同じく肥後西村駅へ。まずは桜と菜の花の合間から下り列車を狙うが、どこで操作を間違えたのか、ひどい前ピン。そんな写真を載せるのは恥ずかしいので、その後に撮った逆光の上り列車を。車両からホームに降り立つシルエットの女性車掌が味噌である。
ところで、今回、原稿を書いている際、時刻表を確認しようと「くま川鉄道」のホームページを開いたら、トップページに全く同じような車掌のシルエット写真があるではないか。場所も同じ肥後西村駅に違いない。ほかにも似たような写真がちらほら。これはいかん、言い訳がましいが、決してこれらの写真を真似たわけではないことを書き添えておこう。
これで「くま川鉄道」の撮影はすべて終了。人吉駅へ向かい、「かわせみ・やませみ2号」に乗り込む。そう、帰りは指定が取れたのである。
車窓からは、国道沿いの至るところで満開の桜並木が望め、目を楽しませてくれる。この日も「SL人吉」が走るので、沿線の要所要所で撮り鉄がスタンバイしていた。白石駅を通過中には、前日に会ったプロカメラマンの姿を認め、「あっ」と思わず声が出るが、手を振る間もなく通過してしまった。
こうして、あっという間に八代に到着。ホームでは、「SL人吉」が待機中である。ということで、最後も「SL人吉」の写真で締めくくりとしよう。
【2018年3月現地、同年5月記】