ホテルに隣接したドライブインで早めの昼食をとる。なにせ今朝は5時半起きだったし、腹が減った。
列車は概ね1時間半ごとなので、ここまで数本しか撮れていないが、これくらいのテンポでちょうどいいような気がする。
ドライブインを出て、さらに郡上八幡に向けて歩き出す。
橋にこだわり過ぎな気もするが、やはり途中のガーダー橋で、長良川を渡るシーンを撮る。郡上八幡で上下列車が交換するので、10分くらいの間隔しかなく、下り第7列車は土手の上で、すぐさま川原に下りて上り第12列車を真横から狙う。
また国道に戻り、郡上八幡を目指す。途中、変わった自動販売機があったので、何だろうとのぞいてみると、ミミズ、ブドウ虫・・・思わずぞぞっと鳥肌が立ちそうになるが、釣り餌の自動販売機であった。さすが渓流釣りの盛んな長良川沿いだけのことはある。
郡上八幡駅には13時20分ごろに到着。
ここから14時25分発の下り第9列車で美濃白鳥まで乗車し、さらに終点の北濃まで行くつもりでいたのだ。
発車まで1時間も暇だね、と思うかも知れないが、実はこの駅の一角に設けられている『ふるさと鉄道館』の見学時間を取っておいたのだ。
前身の越美南線ゆかりの昔なつかしい閉塞機などの展示物をひととおり見学して、ふと駅のホームを見ると、大勢の観光客が列車を待っている。
まだ下り列車にも早いし、上り列車で美濃太田に帰るのだとすると、さらに遅く15時ちょうどだ。
ずいぶん早くから待つんだな、ホームは寒かろうに、なんて思っていると、列車の来る気配。
慌ててホームに出てみると、団体貸切のお座敷列車、ナガラ5形が着いて、また大勢の観光客が下車してきた。
う〜ん、こんなスジがあったのか、予習不足。
ナガラ5形は、ホームの観光客が入れ替わりで乗車すると、10分ほどで折り返していった。
駅前では、いつの間にか大型観光バスが待ち構えている。なるほど、2組のツアーが片道ずつ長良川鉄道に乗るように組んであるわけか。
いっときの喧騒が去った駅で、一服しようと同じく駅の構内にある喫茶店『あじさいの花』に寄る。
店に入ろうと扉を開けると、店番の女性と鉢合わせし、怪訝な顔をされたので、思わず「今日はお休みですか?」と尋ねる。
それでようやくお客とわかってもらえたようで、「あ、いえ、どうぞお入りください」と席に案内され、「すぐにお湯を沸かしますから」と、慌ててポットを火にかけている。
あまり流行ってないのかな、と心配になるが、私が誘い水になったのか、続けて男性客がひとり入ってきて、なんとなくほっとする。
コーヒーを飲んだあとは、予定どおり美濃白鳥へ。そこで1時間半、北濃行き第503列車を待つ。さすがにこの間は暇。
ホームで、ただひたすらあることを待っていた。それは、
そう、スタフを手に持つ運転士がやってくることであった。
美濃白鳥〜北濃間は、スタフ閉塞なので、昔ながらのキャリアが現役なのである。
北濃では、折り返しまで8分しかない。30年前をしのぶ間もなく、駅舎や保存されている転車台を撮ったりして慌しく過ごす。
運転士から、「紅葉は今がピークで、これ以上にはならないだろうね」と声をかけられ、紅葉をバックに列車をカメラに収めると、もう発車時刻だ。
北濃発16時32分の上り第18列車が美濃太田に着くのは18時32分、ちょうど2時間の行程である。
最初のうちは、車窓の紅葉を楽しんでいたのだが、いつしか睡魔が襲い、うつらうつらしている間に、車窓は真っ暗になってしまったのであった。
再訪編につづく。