この日の宿は本命の角館。桂瀬からは、それなりに距離があるので、少し早めに向かうことにする。
比立内を過ぎると、最大の難所、峠越えの山道だ。
秋田内陸縦貫鉄道の前身である国鉄阿仁合線と角館線を隔ててきた峠でもある。両線を結ぶため、十二段トンネルを穿ち、1989年に鉄道は文字どおり一直線に縦貫したが、道路のほうは昔のまま、くねくねと峠道を越えねばならない。
峠を上るにつれ、逆に気温はぐんぐん下がって、桂瀬では18度くらいあったのに、6度前後。山あいには雪が残り、このあたりだけ冬景色のままだ。
峠を越えて、最初の駅は戸沢。このまま走ると上り列車とすれ違ってしまうので、再び雨が降り出してはいたものの、駅に寄って撮ることにする。屋根付きの自転車置場で雨をしのぐが、実はここから撮るのは、何の因果か三度目である。そのことは別の機会に記すとして、かように秋田内陸縦貫鉄道では雨にたたられたのであった。
まるで水墨画のような情景の中から、唯一色をまとったオレンジのAN−8803が現れる。雨男を開き直れば、雨の日だからこそ撮れた写真だ。
その日の最後は西明寺〜羽後太田間で見つけた桜の下へ。ただ、もう盛りは過ぎて、花はかなりさみしい。大覚野峠を挟み南北で、季節に数日のずれがあるようだ。ということは、秋田内陸縦貫鉄道全線で、同時期に満開の桜を期待するのは所詮無理なのかも知れない。
なんとか花の残っている枝に絞って上下列車を撮影。いずれも上から桜がかぶさるアングルで、何とも芸がない。
最後の最後に桜の全景を入れてみたが、ご覧のとおり花はすかすか。この調子では、角館の町中の桜も望み薄だ。