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秋田内陸縦貫鉄道2017
■秋
中毒症状は秋まで続く。
ただ、さすがに少々躊躇したこともあって宿の予約が遅れ、空いていたのは4月にオープンしたばかりという「町家ホテル」のみ。結果から言うと、ちょっとコストを抑え過ぎかなとは思ったものの、やはり新しいホテルは気持ちがいい。この場所は、かつて定宿にしていたプラザホテルの跡地のはずで、なくなったホテルの悪口を言うのもどうかと思うが、なんとなく漂っていた場末感は微塵も残っていない。
翌早朝、恒例の角館〜羽後太田の築堤へ向かう。思った以上に雲が厚く、成果は今ひとつ。ちょうどスズメくらいの小さな鳥が数羽飛び立ったのであるが、ただの黒点にしかならなかった。
撮影後、これもいつものとおりホテルにいったん引き上げ、朝食をとる。焼き魚に玉子焼き、ひじき、納豆、梅干しに、いぶりがっこという地元の漬け物など。典型的な和朝食であるが、食堂を見渡すと、お客さんは、春のとき以上に海外の旅行者が多い。そういうお客さんにこのメニューはつらいのではないか。案の定、東南アジア系と思しき二人連れは、ものの数分で退席してしまった。もう少し工夫してあげればと思う。
チェックアウトしてまず向かったのは、能がないことにまた羽後長戸呂〜松葉の築堤である。ここで上下2本ずつ都合4本の列車を撮影したが、いずれも以前撮ったものとほぼ同じ。神戸から遠路はるばるやってきて何をしていることやら。代り映えしないので写真はそのうちの2枚だけにしておこう。下りと上りの同じ急行「もりよし」で、角館側にはAN8900形が連結されていた。
この日、メインに考えていたのは、戸沢付近のカラマツの黄葉だ。3年前は雨だったので、晴れた日に撮り直したいという思いを果たすためであった。
途中、上桧木内にある「紙風船館」でトイレ休憩。ついでに隣の「ふれあいマーケット」という小屋のような食堂兼売店をのぞいてみる。立派な「紙風船館」の建物・・・だから旅行者が道の駅と間違えて入っては何もないと引き上げてしまうのだが・・・それに比べると貧相と言ってもいいつくりだ。でも、そのおかげで店内にはいると、どこかなつかしさを覚える。
カウンターの上には100円均一のお菓子が並んでいて、その中のまるでソーセージのような棒状のお菓子が目に付いた。
「これは何ですか?」
「かりんとうです」
そう言われても、見た目は一般的なかりんとうとはずいぶん違う。試しに買い求めて早速口にすると、硬めのドーナツという感じ。原材料を見れば案の定、玉子が入っている。調べてみたら、かりんとうドーナツというのは、それほど珍しいものではないようだ。それでも100円にしては食べ応えがあり、撮影の合間に少しずつつまむにはもってこいなのであった。
そして戸沢。
まずは下り列車を狙うが、まさかの3連で少々焦る。そもそもアングルにやや無理があったこともあって、中途半端な出来となってしまった。
次の上り列車で、いよいよカラマツ黄葉だ。文字どおり「晴れて」リベンジは果たせたものの、アングルがほとんど同じで、全く新味がない。少し言い訳すると、もっとカラマツに寄りたかったのだが、アプローチする道がなく、あきらめざるを得なかったのである。