−おいおい、まだ樽見鉄道を続けるの?
・・・まあ、そう言わんと、あともう少しだけ、お付き合いのほど。
2004年4月上旬、名古屋に出張する機会があった。
−なんだ、また出張にひっかけたの? まったくサラリーマンと鉄ちゃんとどっちが本業なんだか。
・・・まあ、そう言わんと、というか会社で散々言われているんだから、もう聞き飽きてるし。
って、そういう問題ではないが。
気を取り直して本題。
出張は都合のいいことに月曜日だったので、その前日の日曜日から出かけることにする。
それにしても4月上旬といえば、本の原稿も校了し、出版を待つばかりとなっていた時期で、もはや取材のはずはない。
「撮影なら桜のシーズンに来なくちゃ」
去年訪れた本巣の車庫で、整備の職員にそう言われたのが心に引っかかっていたのだ。
何としても桜の時期に行かなければ、取材を終えた気分にはなれない。
(こんなことを書くと、また駄菓子さんから『完全主義者』と揶揄されそうだが・・・)
と、気合が入っていたはずなのに、家を出たのは朝の9時近く。
はじめは在来線の新快速で行くつもりだったが、新幹線で遅れを取り戻す。
米原で在来線に乗り換え、大垣に着いたのは11時すぎ。
樽見鉄道のホームに向かうと、臨時の出札口もできていて結構な数の乗客がいる。
ホームで待ち構えていた2両編成のディーゼルカーは、人をかき分けないと乗れないくらい混んでいる。樽見の『淡墨桜』がこんなに人気があるとは思ってもいなかった。
その淡墨桜シーズンの樽見鉄道は、臨時の客車列車が1日3往復も走る、その名も『桜ダイヤ』となる。実際に来てみるまでは、そんなに乗客がいるものだろうかなどと思っていたのだが、この混雑なら合点がいく。
満員列車に乗って、まずは横屋で下車し、犀川で上り14系客車列車『うすずみブルーライン号』(8006列車)を狙う。
横屋には何度も通ったおかげで、川沿いに桜並木があることは先刻チェック済なのである。
早速、川のほとりに歩いていくと、どうも様子がおかしい。なんと、桜はほとんど散り果てていた。今年の桜はずいぶん早い。
しかたなく、8006列車は犀川の土手に咲く菜の花を入れてお茶を濁す。