先を急ごう。そのまま腰越から次の鎌倉高校前まで歩く。このあたりから江ノ電は海岸沿いを走るため、これも定番であるが、江ノ島をバックに写真を撮る。できあがった写真を見ると、もう夕暮れの風情である。
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江ノ島をバックに走る1000形。
もうすっかり夕暮れ。
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鎌倉高校前駅を発車する電車を、やはり江ノ島をバックに撮ろうとカメラを構えると、成人式の式典でもあるのか、振袖の娘さんたちが10数人、ぞろぞろと下車してきた。おお、こっちのほうがおもしろいと、カメラのアングルを浜側から陸側に振る。
それにしても、みな揃いも揃って振袖とは、これだけ並ぶと壮観である。そんな中、ひとりだけ洋装の子がいて、いかにも肩身が狭そう。
「いやだわ、みんな振袖じゃない、行きにく〜い」列の最後尾で、その子が連れの子にぼやいた。
「大丈夫よ、気にしない、気にしない」
振袖の子に言われても、説得力はない。
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振袖の大群と2000形。左手の江ノ島はカット。
左端で鉄ちゃん少年がカメラを構えている。
実は後ろに300形をつないでいたので、振袖には目もくれず、後追いを狙っているのだ。
このへんが歳の差である。
彼の邪魔にならぬよう、この後すぐに立ち退いたのは言うまでもない。
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いよいよ日没が近づくが、最後にどうしても行ってみたかった極楽寺へ。
私と同世代以上の方なら、この駅は、ドラマ『俺たちの朝』の舞台となって一大ブームを巻き起こしたことでよくご存知だろう。それより、私個人にとっては、かれこれ30年近く前、高校の鉄道研究会に入部して初めての行事で、ここ極楽寺にある江ノ電の車庫を訪れた思い出深い場所なのである。
何度か書いたことだが、当時の私は鉄ちゃん駆け出しのころで、カメラさえ持たず、どんな車両がいたのか実のところ記憶に残っていない。
はっきり覚えているのは、ある先輩がいたずらして留置されている電車のパンタグラフを上げてしまい、とたんにコココココンと大きな音が鳴り響いて、その先輩ともども腰を抜かしたことである。
留置している間にタンクのエアが減ってしまうから、パンタグラフを上げたらコンプレッサーが動き出すのは当たり前、と言えるのは、分別のついた?今だからこそで、当時は電車が走り出したと勘違いしてしまったのである。
そんな思い出の極楽寺に、といっても考えてみたら腰を抜かした思い出なのであるが・・・まあそれはいいとして、無理やり下車して撮った写真は、電車のヘッドライトだけ白く写っている。
もちろん、こんな時間に車庫を訪れることもかなわない。
もう真っ暗であるが、せっかく1日券を買ったのだから、鎌倉まで行ってみようと鎌倉行きに乗る。
次の長谷で観光帰りの客で満員となり、そのまま鎌倉へ。
鎌倉駅前をぶらぶらして、江ノ島のホームに戻ると、ちょうどレトロ電車の10形が入線してきた。レトロとはいえ、最新車両なので、扉は両開きだ。
鎌倉からは、今度は帰宅客でそこそこの混雑である。そんな10形に立ったまま江ノ島に戻る。
日が暮れるとさすがに冷える。下車するなりコインロッカーからコートを取り出し、着込んだのであった。
【2002年1月現地、2003年2月記】