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万葉線
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プロローグ
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耳をふさいで
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富山12時44分発大聖寺行き、581・583系のなれの果てと言うのは悲しいが、どこかうらさびしい419系で高岡へ向かう。
高岡駅の構内に入ると、隣のホームがすごい人だかりで、何かと思えば、次に目に入ったのはC56。そういえば、9月14〜16日の3連休に氷見線で復活運転をするんだったと思い出す。こんなことでは鉄ちゃん失格だ。
13時15分発車と聞いて、出発シーンだけでも見ていこうと、隣のホームへ。
「そろそろ発車ですから、耳をふさいでくださ〜い」と駅員が叫ぶ。
ちょうどC56の真横に立っていたので、確かにこれではちょっとまずいかな、と少し離れる。
いよいよ発車時刻。「耳、耳、ミミ〜!」とさらに駅員は大声になっている。
でも、素直に耳をふさいでいる人は、ちらほらとしかいない。あとはみな何を大げさなと言いたげである。
ボーともゴーとも、内臓まで響き渡る汽笛は、言葉では表現できない。
その音の大きさに驚いた母親が、血相をかえて子供に駆け寄り、耳をふさいでいる。不謹慎な連想だが、映画『リング』で、ビデオを見てしまった子供の目を、母親が半狂乱となってふさぐシーンを思い出してしまった。
そんな大勢の見物客の前を、ボッ、ボッ、ボッとC56は小気味よいドラフト音を残し、走り去っていった。
万葉線
高岡は20数年ぶり。それも前回は城端線、氷見線を乗りつぶしに来ただけで、万葉線の記憶はない。
駅の北側(浜側)に出ると、すぐに万葉線の乗場が目に入り、ちょうど7000形が到着したところであった。
一日券の案内があったので、読んでみると、販売は地下街の店に委託しているそうだ。とことこと電停の横から地下街に入り、若干迷いながらも一日券を入手。富山地鉄が600円だったのに、1000円とはちと高いとそのときは思った。
電停に戻ってみると、まだ同じ電車が発車待ちをしているので、そのまま乗り込む。
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終点の越ノ潟にて。
右手にフェリー乗場が見える。
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万葉線は、『がんばれ!路面電車』を出版した頃は、加越能鉄道であったが、2002年4月、第三セクターの万葉線株式会社に転換された路線である。
と、万葉線について、事前に調べていたのはこれくらいで、実際に乗車すると、高岡から単線ということにまず驚く。車内の料金表を見ると、越ノ潟まで450円とある。往復したら900円、運賃が高いということは置いても、一日券にしてよかったと安堵する。
その一日券には、如意の渡しも乗船できるとある。こういう常識に欠けるのがそれこそ大きな欠点であるが、如意の渡しとは、何で有名なのか、思い出せなかった。(ちなみに義経が東北に落ち延びる際、弁慶と渡ったとの由)
それよりも、対岸に行けば、氷見線の伏木駅に出られると書いてあるのを読んで、先ほどのC56の折り返しが撮れるのではと、つい色気が出る。いかんいかん、富山と二股のうえに氷見線まで加え、二兎どころか三兎を追っては何をかいわんや、自らの気持ちをいさめる。
さて、万葉線の7000形、富山地鉄と同形であるが、車内を見渡すと、冷房がないことに改めて気がついた。今日は窓を開ければ、さわやかな風が入るが、真夏はちょっと大変だろう。それでも、ついこの前(といっても20〜30年前)までは、通勤電車はもちろん、路面電車に冷房など考えも及ばなかったものである。
単線区間の本丸会館前で交換。ノートにメモして帰りに寄ることにする。時間的にいって、終点まで一気に行って、帰りに気になったポイントで2〜3駅、途中下車するしかないと思っていたからだ。
本丸会館前で交換したかと思うと、次の広小路で複線に。線路状態がかなり悪いようで、揺れと音が激しい。乗り合わせた家族連れが、互いに大声で話していた。
途中、その騒音がふっと途切れる。大声で話していた家族連れが、梯子を外されたような顔で、きょとんとしている。線路を見ると、どうやら敷きなおした部分のようで、見た目よりも音のほうが劇的な変わりようである。