本来のツアーの日程では、翌朝ドゴール空港発10:20のKLMで、帰国の途につくのであるが、ここでオプションを行使して、1日延泊する。せっかくのパリの自由行動が1日だけではもったいない。特にモンサンミッシェルへ行ったメンバーは、パリでの自由時間は全くなかったので、当然何組かは残ると思ったのに、添乗員曰く「あなた方だけです」
とたんに心細くなる。娘も「みんなと一緒に帰りたい」などと言い出す始末。もちろん、添乗員も帰ってしまうので、1日だけとはいえ、個人旅行だ。でも、なんとかなるさ。
免税手続きの時間を考慮して、早朝6時に出発するみんなに別れの挨拶をして、朝食後、地下鉄で凱旋門にちょっと寄ってから、前日は休館だったオルセー美術館へ。
「1日延泊したからこそ、来れたんだぞ」と娘に偉そうに言う。
その後は娘のリクエストで、ルーブル宮殿の一角にある装飾芸術美術館。
ただ、長旅と前日歩き回った疲れのせいか、身体が重く、歩くのも億劫になってきた。
カミさんや娘も疲れた顔で、ホテルに帰ると言い出すが、こちらも異を唱える元気はなく、近くのオーガニックレストランで昼食をとって、ホテルに戻る。
夕方、少し元気を取り戻し、エッフェル塔のシャンパンフラッシュの動画を撮りにひとり出かける。1回目の20時まで時間はあるので、いったんオペラ座近くのカフェで、贅沢な言い方だが、道行く人々を眺めながら時間つぶし。向かいの席では、地元の若者がずっと話し込んでいる。傍らにはジタンの煙草。庄野真代の唄を思い出す。
それにしても、煙草に甘いのは日本だけかと思っていたのだが、ヨーロッパの方がよほどルーズだ。歩き煙草は当たり前、オペラ座の周囲も、敷き詰めるように煙草の吸い殻が落ちていた。喫煙者の自分が困惑してしまうくらいだ。このあたりがカミさんや娘にも不評で、パリは汚いという評価を下されてしまった。煙草はさておき、こういうごちゃごちゃした感じは、好きなんだけどなあ。
頃合いを見て、オペラ座から地下鉄に乗り、エッフェル塔に近そうだと目星をつけた駅で降りる。ところが、地上に出ると、エッフェル塔は、はるかかなた。とんだ見当違いであった。地下鉄に戻っても傷口を広げそうなので、とにかくエッフェル塔を目指して歩く。
何とか間に合うが、動画で撮っても今一つさえない。シャンパンフラッシュは肉眼で見るに限る。
ついに最終日。前日と同じ時刻の飛行機だが、こちらは免税品など買ってもいないので、7時すぎにタクシーで出発。
しきりに運転手が「どこに行くのか」と尋ねるので、何度も「ドゴール空港だ」と答える。運転手は、そうじゃないという顔をするが、ドゴール空港以外にないじゃないかと、こちらもいらだってくる。しびれを切らした運転手が、信号待ちの間に時刻表のような冊子を開き、どこだ?と再び尋ねる。
それをのぞきこんで、やっと運転手の言っている意味がわかった。そこには航空会社別のターミナルの一覧表が載っていたのである。考えてみれば、大空港なのだから、ターミナルが分かれているのは当たり前だ。え〜っと、KLMの出発便は・・・あった、2F!?
その略号には見覚えがあった。手元の予約券を改めると、確かにドゴール空港2Fと書かれていたのである。ただ、これをドゴール空港の2階という意味だと思いこんでいたのであった。
こうして、無事?ドゴール空港2Fターミナルに到着し、何を差し置いてもチェックインだ。KLMの窓口で、チェックインを頼むと、機械を自分で操作しろという。そういえば、「機械の操作はちょっと面倒だけどね」と添乗員が言っていたのを思い出した。
確かに操作してみると、やれ全員のパスポートナンバーから有効期限など、やたら入力項目が多くて時間がかかり、変な汗をかいてしまう。
何はともあれ搭乗手続きを済ませ、機内に乗り込み、後は日本を目指すだけ。わかってはいても、10数時間、狭い機内に閉じ込められるのは、往きよりはるかに身に応えるのであった。
<完>
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