どうやって行き着いたのか覚えていないのだが、YouTubeの映像をたどっているうちに、JR東海の一連のCMが目に留まった。
バブルの頃の有名な『クリスマスエクスプレス』のCMに並んで、『ハックルベリーエクスプレス』というCMを見つけ、何気なく
1990年版を再生して・・・・・はまった。
小学校4〜5年生くらいの男の子が弟と二人、夏休みに田舎の親戚(たぶん)を訪ねるところから始まる。
その親戚で迎える同い年か1つ年上の従姉の成長した姿に、兄は戸惑うばかり。弟は無邪気に従姉にじゃれつくが、兄はずっと距離を置いたままだ。
それを察した従姉が、ひとり膝を抱えて座る兄に近づき、ちょっとかまってあげる。そして二人の距離が少しずつ縮まっていく。
いやあ、なんて切ない。たった1分のCMなのに、下手なドラマ顔負けの場面展開だ。子役たちの演技も秀逸で、いっぺんに感情移入してしまい、身体中から、甘酸っぱいものがあふれでてきてしまう。
ちょっと男目線すぎて、女性からは「いやらしい」と言われそうな気もするが、男の子なら、少なからずこういう感情を持ったことがあるはずだ。
そして、ここからは全く私的なことなのだが、自分の経験にもラップするところがあって、よけいに胸が共鳴してしまうのだ。
というのも、両親の出身地である九州には、まさにひとつ年上の従姉がいたのである。
両親に連れられて、何度か九州に出かけた中で、もっとも古い記憶は小学校に上がる前後のころのこと。
男兄弟に、突然おねえちゃんができたことが嬉しくて、ずっとまとわりついていたような気がする。CMで言えばまだ弟と同じだ。恥ずかしいので書くのも憚られるが、「一緒に寝る」と駄々をこねて、従姉に添い寝してもらった覚えもある。ああ、やっぱり恥ずかしい。
次に訪ねたのが小学校4年のときだから、彼女は5年生。CMと全く同じシチュエーションだ。
ただ、彼女には、どちらかと言うと憎まれ口ばかりたたいてしまったように思う。このあたりはCMと違うところだが、そんな態度をとってしまうのも、そのころの年代にはありがちである。
だから、もっぱらの遊び相手は、彼女の弟、つまり従弟なのであった。
それから約6年後、高校鉄研の九州合宿のあと、ひとりで親戚の家を訪ねた。
高校生ともなれば、もう立派な「大人の女性」だ。再会した従姉は、身内びいきを抜きにしても美しく、がぜんまぶしい存在になってしまった。
ここでやっとCMの兄の心境に至ったわけで、我ながら奥手というか精神年齢が低いというか。
その精神年齢に合わせるように、幸い?もう一人幼い従妹がいたので、このときのもっぱらの遊び相手は、その従妹であった。
大学に入ってからも、夏休みになると九州へ行き、親戚の家に居候しては鉄ちゃんをしていた。
彼女の部屋からは、ヒット曲の『ミスターサマータイム』がいつも流れていて、「サーカスが好きなんだね」と声をかけようと思いながら、そんなことすら言いそびれてしまった。
結局、従姉との距離感がつかめず、面と向かってまともな会話もできないままであった。CMの子供たちにも及ばない、ネクラな鉄ちゃんらしい話である。
それでも、後悔というような気持ちはない。九州での日々はいつも新鮮で、充実したものであった。だから、どんなことでも、私にとってはすべてが大切な思い出なのだ。
と、ここで締めくくろうと思ったのだが、考えてみれば、夏休みのたびに居候されたうえに、ただ飯食われて、親戚にとっては、いい思い出どころか、いい迷惑だったに違いない。九州で充実した日々を送れたのも、快く迎えてくれた明るい親戚一家のおかげである。
それなのに、何のお返しもできていない。せめて最後に親戚のお店をPRして、少しでも埋め合わせをしておこう。
『九州あっちこっち』で触れたとおり、その店とは甘木にある
「菓秀 桜」という和菓子屋である。
甘木鉄道や西鉄の甘木駅から、商店街まで10分ほど歩かなくてはいけないが、撮り鉄や乗り鉄で訪れた際には、ぜひ足を伸ばしてお立ち寄りを。>>>
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甘木郊外に、九州の小京都のひとつで、秋月という風情のある町がある。ここにも、こぢんまりとしたしゃれた支店があるので、観光ついでにどうぞ。>>>
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巷で人気なのは、和菓子屋の「シフォンケーキ」。驚くほどふわふわで、口当たりが絶妙なケーキだ。
そのほか、素朴な「おいも」もお勧め。個人的には「甘木焼き」が大好物だったりする。
店でとっても愛想のいいおっちゃんが出迎えたら、従弟に間違いない。私の名前を伝えれば、何かサービスしてくれるかも。それとも、かつてのただ飯代が上乗せされてしまうかな・・・。
【2011年5月記】