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従弟
従姉妹のことばかり書いて、俺のことは?と従弟に突っ込まれそうなので、今度は従弟のこと。
実際のところ、いとこの中では、彼にもっとも世話になったことに間違いはない。
学生時代だけでなく、社会人になってからも、廃止直前の鹿児島交通に出かけた後、事情はいよいよ恥ずかしくて書けないが、神戸に帰れなくなり、彼が当時住んでいた博多のアパートにころがりこんだこともある。
本当に世話好きというか、面倒見がいいというか、学生時代に甘木へ行ったおり、彼と一緒に年老いた姉妹の住む親戚を訪ねたときもそうだった。
ささっと部屋を片づけて洗い物をし、お茶を出したり、甲斐甲斐しく働いていたのである。一方の私はといえば、指をくわえて見ているだけというのが情けなかった記憶がある。
どこか人なつっこい人柄は、九州人に共通したものかも知れない。何度も九州を訪ねたのも、そんな気風にふれたかったことが大きな理由なのである。
数年前に家族を九州の親戚に連れて行ったことがあるが、至れり尽くせりのもてなしに、「なんでこんなに親切なの」と娘も感嘆していたものだ。
その彼が今、「菓秀 桜」の主として、店を切り盛りしている。本店のある商店街のアーケードは、ご多分に漏れずシャッター街化しつつあり、商売としては厳しかったはずだ。それを、秋月に支店を設けたり、新商品をつくったり、工夫を重ねて乗り切っているのが彼らしい。
もし、父親が店を継いでいたら、私が彼の立場だったかも知れないが、とてもそんな才覚はない。
彼でよかったと、心底安堵している。
ネットで「菓秀 桜」と検索してみると、たくさんの人がブログなどで紹介してくれている。ありがたいことだ。
地元福岡のテレビ局までヒットして驚く。そうか、テレビ局の取材も受けたことがあるんだ、知らなかった。
従姉の項で、恩着せがましく店のPRなどと言ったけれど、何の役にも立っていないような気がする。
そうとなれば、自ら行動するしかない。
たまたま、個人的に手みやげを用意しなくてはいけない用件ができ、ここぞとばかり、直接「菓秀 桜」に注文する。
電話で従弟に趣旨を伝え、手みやげ用2箱と、自宅用1箱の郵送をお願いする。久しぶりに従弟と電話口で話して、妙に緊張しまっている自分がおかしい。
電話を切ってから、自宅用に好物の『甘木焼』を頼むのを忘れたことに気づき、代価の郵便為替を送る際に、その旨メモを入れて送る。
ちょっと驚いたのが、その日の晩だったか、娘が突然「九州のお菓子が食べたい」とつぶやいたことである。
まだ、注文したことを言っていなかったのに、何か感じるところがあったのだろうか。不思議な符合だ。
そして配送当日、彼から電話が。何事かと出てみると、もったいぶって「残念なお知らせがあります」と言う。その口振りで、甘木焼のことだな、とぴんとくる。彼曰く、甘木焼は表面にグラニュー糖をまぶしてあるので、この時期は湿気てしまい、郵送には適さないので入れていないとのこと。それはしかたない。
こうして、無事折りを受け取り、自宅用の1箱を持ち帰る。
折りを開けてみると、『くずまんじゅう』や『栗饅頭』、栗や梅の実をパイ生地で包んだ『ほおずき』、そして娘が気に入った和風ゼリーの『風香る』などが詰まっている。
どれもおいしくいただき、あっという間になくなってしまった。
彼が電話してきたとおり、『甘木焼』がないは残念だが、それは次の機会にとっておこう。
【2011年7月記】