松前駅のあとは、郡中線の終点である郡中港へ行くのがセオリーだろうが、松山市へ取って返す。それには訳がある。
松山市で高浜線に乗換え、平面交差で有名な大手町へ。平面交差が目的なら、何も慌てて松前から引き返さなくても、とお思いだろう。ちょっと待って、もう少し話を聞いて欲しい。
あれは2003年に訪れたときのこと、大手町で写真を撮っていると、時刻表にない時刻に踏切が鳴り出し、変だなと思ったら、目の前を700系が1両だけとことこと走っていくではないか。
700系といえば、一目でわかるとおり元京王の5000系である。あの5000系が単行で走っていく・・・眩暈がするくらい衝撃的なシーンであった。
後に、この単行は、朝方のラッシュ時の増結車1両を松山市で解結(切り離)し、古町の車庫へ回送する列車と知り、もう一度、このシーンを見たいと思っていたのだ。
回送列車のダイヤは、平日の松山市発9:39、9:54、10:24、10:39の4本。松山市駅で朝一番に確認したのだから間違いない。
そう、タクシーで松山市に急いだのも、ダイヤを確認するためだったのである。そして松前駅から引き返した訳は、もう説明するまでもなく、回送列車の時刻が迫っていたからなのであった。
今回の撮影の狙いは、ずばり『単行同士』。単行の回送と、それを踏切で待つ単行の路面電車との2ショットを考えていたのだが、ちょっと事情もあって、結果的にはそれは果たせず。
事情というのは、4本もあるからと、気が緩んでいたとも言えるのだが、1本目の回送の直前に、松山駅付近で、路面電車の架線の修理が始まったので、ついそちらを見に行ってしまったのだ。直前に小走りで戻りかけると踏切が鳴り出し、しかたなく適当に撮ってしまったが、そういうときに限って路面電車がちゃんと踏切で待っていたりする。
2〜3本目は、まったく路面電車はからまず。それも2003年のときのように、元京王5000系の700系を期待したのだが、運用が変わったのか、たまたまなのか、1本目も含めて元京王2010系の800系ばかりであった。
ここで最後の1本まで粘るか少し迷うが、やはり松山市での解結シーンも見ておきたいので、大手町から高浜線に乗車して、松山市へ戻る。
まさに乗車した列車が、松山市で最後尾の1両を切り話すようで、車内では職員が解結の準備に入っていたのであった。
考えてみれば、解結作業といい、回送といい、手間のかかる話で、古町で切り離せばいいと思うが、一般客にとっては途中駅でしかないので、理解が得にくいのだろう。
ところで、伊予鉄道では今年(2009年)8月から、新たに3000系(元京王3000系)6両が運用に就いたそうだが、3両固定編成なので、今後増備されれば、いつの日か、回送シーンは回想シーンになってしまうかも知れない。