ところで、上信電鉄の架線柱には古レールがたくさん使われている。雨ざらしの架線柱でありながら、刻銘がはっきり読み取れるものも多くて驚かされる。
その中から、2つ紹介。ひとつはドイツのUNION(ウニオン)社製、もうひとつは英国BARROW(バーロウ)社製のレールである。
さて、目的の千平駅は、道路端の階段を上ったところにあった。駅前広場などもなく、うっかりすると見過ごしてしまいそうな駅である。
駅自体も、片側ホームに小屋のような待合室があるだけの小さな無人駅だ。
それでも、ちゃんと待合室に座布団が敷かれているところにローカル私鉄ならではの温もりを感じる。
下仁田からゆっくり歩いてきたせいで、千平から上り電車に乗ったときにはもう昼も近く、残された時間はあまりない。
でも、せっかくここまで来たのだから、200形もPRしている富岡製糸場を見なくちゃ、ということで上州富岡で下車。
ホームに降り立つと、ちょうど交換の下り電車が入線してきた。一目見てどちらも元西武鉄道とわかる車両だ。そしてどちらも「蒟蒻畑」のマンナンライフの広告車である。
駅を出て、またびっくり。やはり1960年ごろのブルーバードが何食わぬ顔で駐車している。よく見ると、先のブルーバードとラジエーターグリルの形が少し違う。もしかしたら、こちらのほうがさらに古いブルーバードかも知れない。
なんという町なのだろう。時間をかけて町の隅々を探索したら、もっといろいろな発見がありそうな、そんな気がしてくる。
富岡製糸場は、上州富岡駅から歩くこと10分ほど。
かつては工場として、人と物が行き交い、人と物の音が響きあっていたのであろうが、今はきれいに整備され、静けさに包まれている。
広い敷地に建てられたレンガ造りの工場や事務所を巡ると、何とも穏やかな気分になる。おそらく他の観光客も同じなのだろう、みなゆったりとした足取りで、そぞろ歩いていたのである。
【2007年11月現地、12月記】
再訪編につづく。