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秋田内陸縦貫鉄道2019
<秋>
2019年秋もいそいそと秋田内陸縦貫鉄道へ。本当にやめられない。
ただ、今回は何かと雑用が入ってしまい、初日は東京に寄って夕方、角館へ入り、翌々日の午前中には引き上げるという、実質2泊1.5日という短縮バージョンである。
それで、これも春と同様に結論から先に言うと、お天道様が拝めたのは、最終日午前中のほんの一時だけで、またもや消化不良で終わってしまったのであった。なので、秋は簡単にまとめてみよう。
まずは、飽きもせず角館〜羽後太田の築堤だ。今年は秋の訪れが少し遅かったようで、田んぼの道沿いに植えられたサルビアが残っている。そこで2日目に撮ってみたが、やはり曇り空の下では映えない。
最終日の早朝、晴れの天気予報に勇んで出かける。秋になれば日の出が遅くなり、6時台の始発列車でも十分間に合うのだ。でも、空は一面どんよりとした雲に覆われていて、がっくり。ところが夜明けを迎えると、空一面の雲がオレンジ色に染まりだした。おお、これはすばらしい、との興奮も束の間、春の夕焼けと同じく、あっという間に色褪せていく。かろうじて朝焼けの残り香とでも言おうか、そんな色合いの中、列車がやってきたのであった。
これもいつものとおり、いったん宿に戻って朝食を取り、チェックアウト。幸い天候は回復して絶好の撮影日和だ。そうなれば、もう一度サルビア狙いしかない。現地へ行ってみると、10人近い農家の人たちが、一斉に刈払機で草刈りを・・・!?
「ちょ、ちょっと待って!!」衝撃で息が止まりそうだ。よりによってこのタイミングでサルビアを刈ってしまうとは。刈払機にかかったら、サルビアなどひとたまりもない。容赦なく刈られて軽トラに積まれていく。せめてあと1時間遅らせて、などと言えるはずもなく、呆然と立ち尽くす。
撮影はあきらめて作業を見守るうち、ふと疑問が芽生えた。刈り取ったサルビアをどうするのだろう、染料にでもするのだろうか。そこで、軽トラへの積込み作業をしていたおばさんに尋ねてみると、処分するだけだという。では何のために植えているのか問うと、地域を盛り上げるだめだそうだ。
「夏場は一面赤くなってとてもきれいですよ」
「そのサルビアを撮りに来たのに、刈り取られてびっくりしました」と、つい恨み言を口にしてしまう。
「ごめんなさいね、今朝一番からみんなで刈り取るって決めていたんです」
そこでもう一人のおばさんが「どちらから?」と口を挟む。
「神戸からです」
「あら?もしかしたら去年も来てました?」
「!!」
なぜ去年来たことを知っているんだ? 一瞬戸惑うが、あっと思い出す。ちょうど1年前の夕暮れにこの築堤で撮影していたとき、自転車に乗ったおばさんが通りがかり、「撮影ですか?」「そうです」「どちらから?」「神戸から」なんてやりとりをした・・・そうか、そのときのおばさんだ。
「毎年来るんだったら、ホテル代もったいないから、うちに泊まりなさいよ」
ありがたいお誘いだが、さすがにそこまで甘えられない。心遣いへのお礼だけ告げて、おばさんたちと別れたのであった。
一転して場所は戸沢付近。
ここへ行ったときも、思わず声を上げてしまう。「うわっ黄葉してない!」そう、戸沢ではカラマツの黄葉が目当てなのだが、葉先が少し色づいた程度でしかない。今年はやはり全体的に秋の訪れが遅れているようだ。
カラマツはあきらめ、モミジを前景にしたアングルでお茶を濁す。
そして、もう最後の一枚。
これまたいつもの松葉〜羽後長戸呂の築堤だ。
実は帰りの「こまち」は、春と同じ角館11:19発、臨時の52号を予約していた。今回は神戸で約束があるわけではないが、これに乗れば、新神戸には18時前に着ける。翌日は仕事なので、帰るにはちょうどいい時間帯だ。前回の経験から、松葉で撮影してすぐに角館へ戻れば、こまち52号に間に合うこともわかっている。
築堤沿いに目をやれば、昨年は全く実を付けていなかった(収穫されてしまった?)柿がたわわに実っている。そうとなれば、もちろん狙いは柿だ。本来は、主題の柿に近づいて撮るべきなのだが、柿の木との間には小川が流れていて、対岸に渡るにはちょっと遠回りをしないといけない。そのロスタイムで、こまち52号に乗り遅れたら元も子もないと、移動は断念。おかげで構図が中途半端でせっかくの柿が目立たない。さらにガーダー橋の下にガードレールが入ってしまうのを嫌ってカメラを少し上に振ったら、よけい落ち着かない写真になってしまった。
やはり対岸に渡るべきだったなあ、と頭をかきながら撤収して、角館へ急いだのであった。
【2019年4〜5月、11月現地、2020年1月記】