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そして、先ほど行き損なった駅へ向かう道沿いに並ぶ店のうち、まずは「橘屋八頭司羊羹本舗」へ。迎えてくれた若旦那に同じ屋号のいわれを尋ねると、祖父の代に兄弟でのれん分けしたとのこと。ここでも小さくて安い羊羹しか買っていないのに、ショーケース越しではなく、ちゃんと表に出て、丁寧に商品を手渡してくれた。
桜月堂は、これまた話好きなおばちゃんで、ついつい話し込んでしまう。
こちらも調子に乗って、練り羊羹と切り羊羹の作り方の違いまで教えてもらう。簡単に言えば、練りはアルミの袋に封入するので日持ちもする、切りは昔ながらの大きな羊羹船に流し込み、天日に干して切り分ける。
「でも、今は衛生上、天日じゃなくて機械で乾燥させてますよ」と、おばちゃんは補足説明も忘れない。
「昔はつくれば売れたけど、今は売る努力をしなくちゃ」
お得意さんを増やして、各地の物産展などにも出して・・・そんな前向きなおばちゃんに元気をもらう。
最後は「八頭司羊羹舗」
ここもおばちゃんが出てきたが、いささか素っ気ない。だから駄目だなどとは言うつもりはない。本家というプライドがあるのかも知れないし、それぞれ店の気風が感じられて、おもしろかったというのが本音だ。
さすがに疲れたので小城駅に戻って小一時間ほど休憩する。そうしているうちに陽も傾いてきた。
筑後川橋梁で時間を食ってしまい、羊羹店は何軒かまわり損ねてしまったが、ここで撮り鉄モードに切り替える。そう、前回のキハ47乗車に触発されて、夕暮れの唐津線の撮影は、最初から予定していたのである。やっぱり羊羹だけでは終われない。
小城駅や小城〜東多久間で数本の列車を撮影する。
撮り鉄を終えるとどっぷり日が暮れた。さあ、いよいよ本日のラストイベント、ホタルの出番である。山へ向かう途中の臨時駐車場に車を置いてシャトルバスで現地へ。平日なのに予想以上の人出でごったがえしているが、たくさんのホタルが健気に舞っている。これほど多くのホタルが飛んでいるのは見たことがない。
「人生初のホタルだ、すごい」という男性の声が聞こえた。
「そうなの?よかった〜連れてきて」と嬉しそうな女性の声が応じる。
振り向けば、若いカップルだ。なんとも微笑ましい姿にこちらもほっと心が和む。
いつまでもホタルを見ていたいところだが、踏ん切りをつけて引き返す。この日は博多まで行ってレンタカーを返し、そのまま宿泊することにしていた。博多に着いたのは22時過ぎ、そんな時間にレンタカーを返せたのも、24時間営業のレンタカー店(ニッポンレンタカー)だからこそ。そして翌朝、朝一番の新幹線で東京へ。何を隠そう、今回も出張にひっかけた?のであった。
それで、購入した羊羹はどうなった?
金額にして締めて7,151円、3キロ近い重さの羊羹であるが、もちろん、すべて食べた。
で、お勧めはどこの店?
一応、自分なりにランキングはしてみたのだが、買えなかった店もあるし、そもそも味の好みは個人で違うから、敢えてここには記さない。ぜひ、ご自身の舌で確かめてもらいたい。